14/03/27 02:20:53.00
(>>1の続き)
■今後10年以上、中国の台頭は続く
論文の内容を適宜紹介し、特徴的な論点を分析してみることにする。
彼の考察の前提は、今後10年以上中国の台頭が続けば、台湾が現在享受している「事実上の独立国家」であるという「現状を維持
すること」が困難になるだろうということである。
台湾住民の意思は、中国に「統一」されることを支持せず、基本的に「現状維持」を志向し、チャンス(つまり中国が台湾の「独立」を
認める機会)があれば、「独立」を目指すというものである。しかし、中国がそれを認める可能性がない状況に加え、米国が中華人民
共和国を唯一の正統政府であるという「1つの中国」政策にコミットメントしている事実に照らせば、台湾の「独立」はあり得ないことになる。
中国の「台湾統一」願望は、中国にとって台湾が常に「神聖な領土」であったとするナショナリズム的側面と、中国が台頭するなかで、
アジアでどのように振る舞うかに関わる安全保障的側面から説明し得る。
ナショナリズムについては多言を要さないが、中国共産党の「統治の正統性」にも関わってくる問題である。安全保障的観点に
ついては、歴史的に見た大国間政治の理論に従って予見すれば、米国が19世紀にヨーロッパ列強を西半球から追い出したように、
中国はアジアから米国を追い出し、地域覇権国家を目指すだろうと予見している。
■米国が台湾を手放すべきではない理由
以下はミアシャイマーの観点である。
中国が台湾を統一することによって得られる戦略的利点は、第1に台湾の経済・軍事的資源を取り込むことで、アジアにおける
パワーバランスを、中国にとってさらに有利な方向に変化させることができることだ。
そして第2に、中国に隣接した台湾という「巨大空母」を手に入れることによって、西太平洋方面へのパワープロジェクション能力を
強化することができる。
このように中国による「台湾統一」が中国に大きな利点を与えることになるとすれば、それを阻止することが米国の利点となるわけ
だが、台湾はその文脈において、いつまで米国に安全保障を頼ることができるかどうかが問題になる。
米ソ冷戦時代と同様に、米国は台頭する中国に対抗するため、中国からの脅威を共有する日本、ロシア、インド、韓国、ベトナム
などの国と提携し、中国とのバランスを取ろうとするだろう。米国は、台湾がこの提携に加わり重要な役割を果たすことを望むことに
なる。米国は台湾の戦略的資産を自分たちの側に置き、中国側に渡さないことで戦略的なバランスを取ろうとするのは間違いない。
同時に、米国の台湾に対する安全保障上のコミットメントは、アジア地域における米国に対する信任に大きく関わる。中台間で危機
が起こった場合に、もし米国が台湾との軍事的な関係を断ったり、台湾の防衛に失敗したりすれば、アジアにおける米国の同盟国
に対し、米国の保護に頼ることはできないという強力なシグナルを送ることになる。その意味からも、米国は台湾の擁護にこだわる
ことになる。
■米国が台湾を見放すことになる理由
しかしその一方で、中国に対抗し、バランスを取るための連携に台湾が持続的に参加することは難しい。今後10年以上先に、現在
よりも格段に軍事力を強化した中国が台湾を攻撃した場合、米国が台湾の防衛を助けることができなくなっていることが考えられる。
地理的に見ても、台湾は中国に非常に近く、米国からははるかに遠い。これは軍事力を投入する場合、中国に圧倒的な優位をもたらす。
しかも、米国は核戦争へのエスカレーションを恐れ、中台危機に際して中国に対し大規模攻撃を仕掛けるのに消極的になるだろう。
これも中国を利する要素となる。
(さらに続きます)