14/03/26 01:37:50.00
プロスポーツの世界において、見る者のいないスタジアムほど空疎なものはない。サッカーのＪリーグで浦和－清水の一戦が
無観客試合として行われた。歓声の響かないフィールド、その背後に広がる荒涼とした景色を心の目に焼き付けたい。
浦和のサポーターが掲げた差別横断幕が原因である。書かれていた「ＪＡＰＡＮＥＳＥ ＯＮＬＹ」の文言は人種差別の発露以外の
何ものでもなかった。ところがクラブは試合終了まで撤去しなかった。
Ｊリーグの制裁により、クラブは試合の入場料収入が得られなくなった。横断幕を掲示したサポーターらも無期限で入場禁止と
なった。差別は許されず、行為に及んだ者は罰則を受けるべきであり、放置は容認と加担に等しい。それが社会的な合意と確認する
機会にしたい。
慄然（りつぜん）とさせられるのは、悪意の表出のためらいのなさである。横断幕を作った３人は、ゴール裏のスタンドは自分たちの
聖域で、海外からの観光客に入ってほしくなかったとクラブ側に説明した。
日本人の自分たちは特別な存在であり、よそ者の外国人は従って選別され、排除されても構わない－。意識的にであれ、無意識に
であれ、根底に息づくのは差別に基づいた排外の思想である。
その危うさは、かつての米国やアパルトヘイト（人種隔離）政策が行われた南アフリカで見られた「ＷＨＩＴＥ ＯＮＬＹ」の看板を
思い浮かべればよい。
「白人以外お断り」の表示は、黒人の尊厳をただ踏みにじったのではなかった。自らが帰属する民族の優越思想を正当化し、
少数者に対する侮辱と暴力をあおった。
一つの暴力は弾圧に、弾圧は大虐殺にもつながりかねない。過ちの歴史は、例えばナチスドイツが扇動し、一般市民も手を染めた
ユダヤ人に対するホロコーストに明らかだ。差別の芽を摘み取らなければ、社会はいずれ破滅に向かう。
目線を観客席の外に転じてみたい。在日コリアンへの差別と排斥を唱えるヘイトスピーチ（憎悪表現）は、街中やインターネット上で
繰り返されている。醜悪な横断幕はその延長線上に掲げられたものとみるべきだろう。なぜなら、スタジアムも、排斥デモの現場も、
ネットの空間も、同じ社会の日常に存在し、線引きなどできないからだ。
ソース（カナロコ） URLﾘﾝｸ(news.kanaloco.jp)