14/01/04 14:28:52.51
★【社説】年のはじめに考える 福島への想い新たに
時間を押し戻そうとするかのような北風が、年の瀬を駆け抜けました。
三度目の年頭。もう一度、心に深く刻まなければなりません。福島を忘れない。
オランダの首都アムステルダムの街を歩くと、三つ並んだ十字の印を至る所で見かけます。
赤い地の真ん中に、黒っぽい横線が一本、その上に白い十字が横に三つ並ぶのは市の旗です。
そして、二頭のライオンに挟まれて、十字が縦に三つ並ぶのが市の紋章です。
◆十文字が意味するもの
三つの十字の意味はと言えば、その昔、街を襲った三つの災い、洪水、火災、感染症を表しているそうです。
起こりうる災いの怖さを子々孫々まで語り継ぎ、常に備えを怠ることがないように、あえて十字を掲げています。
江戸時代からオランダに多くを学び、近代化の礎にしたこの国も、災厄を歴史に刻む方法までは、教わらなかったと言うのだろうか。
首都東京の中心が、忘却の波に沈み始めているようです。
福島の事故現場は収束に向かうどころか、混迷を深めています。
爆発を免れた4号機では、傷ついていない核燃料の取り出し作業が始まりました。
しかし、1~3号機から溶け出した燃料は所在さえつかめません。原子炉格納容器の外に溶け落ちた恐れもある。
無事故でも一基百年といわれる廃炉、解体への道は、緒に就いたとも言い難い。
汚染水は年末年始もお構いなしに流れ出ています。
熟練の作業員は、被ばく線量が限度に達して次々に現場を離れ、作業の質は低下する。
自治体に丸投げされた、有事の際の避難計画作りは一向に進みません。
計画はできたとしても、目に見えない放射線からどこへ逃げれば安心なのか。
使用済み核燃料の捨て場所は、どこにも見つからないでしょう。リサイクルの計画も夢物語の域を出ていません。
十字、いやバツ印をいくつ付ければいいのでしょうか。
これだけ多くの災いの種を抱えているにもかかわらず、
政府は前政権の「二〇三〇年代原発ゼロ」から一転、原発を「重要なベース電源」と位置付けました。
ベース電源とは、二十四時間、しかも安価に稼働させられる電源です。震災前は、原発と揚水発電以外の一般水力。
そして石炭火力がそうでした。
◆原発こそ不安定では
電力需要時に足りない分を補うのが、ピーク電源と呼ばれるLNGや石油火力です。
原発は、出力調整が極めて難しく、一度運転を始めたら、二十四時間最大出力で、突っ走るしかありません。
今、国内に五十基ある全ての原発が、再び停止しています。(続く)
東京新聞 URLリンク(www.tokyo-np.co.jp)
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