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★靖国参拝で露呈した、戦略なき安倍外交 なぜ中国の仕掛けた「古いワナ」に、自らはまるのか?
安倍晋三首相が、政権発足から1年後の12月26日に靖国神社を参拝した。
首相による参拝は2006年8月の小泉純一郎首相以来で、安倍首相としては首相就任後、初めての参拝だ。
予定通りの行動なのだろうが、今後、さまざまな波紋が予想される。
中国問題で屈指のジャーナリストである富坂 聰氏が、安倍首相の今回の参拝や、日中関係の今後などについて、鋭く分析する。
安倍首相が靖国神社を参拝した。
「2014年正月の参拝説」などもあったが、首相は第一次安倍政権時代に参拝できなかったことを「痛恨の極み」としていた。
7月の参議院選挙での大勝で基盤が固まった首相としては、「政権から1年での参拝」は、政治日程の中に事前に組み込まれていたはずだ。
●脆弱な中国の政権に、世論を押さえられるか
安倍首相は、以前から参拝について「戦略性」を強調していた。問題はそれが「どの程度」のものなのかだ。
参拝によって「予想されるリアクション」を全て考慮に入れて、本当に動いているのか。
もし、そうでなかったとしたら、あまりに思慮がなく、非常に危険だ。
中国の習近平政権は、ポピュリズムの上に成り立っており、実は非常に脆弱だ。
「小康状態」だった靖国の問題に再び火が付き世論が沸騰したら、それを押さえきれない。
当然、政権としては、世論が沸騰する前に何らかの措置をとらざるをえなくなる。
また当然のことながら、今回の参拝は軍関係者を中心に、「対日強行派」を勢いづかせてしまう根拠を与える。
「やはり日本は話ができるような相手ではない」という論理がまかりとおる危険性が増す。
外交では、そもそも100点をとることは無理だ。
マニフェストや選挙公約などで国内向けにいろいろな約束をしたとしても、すべて押し通すことは容易なことではない。
米国など他の国も、政治家は選挙時こそ、国民に向かってある国に厳しい態度をとることを表明しても、
最終的には完全に実行することまではせず、実をとろうとするものだ。
●「日米同盟に楔」の危険性、極めて大きな参拝のコスト
今回、安倍政権が参拝するにあたっては、参拝によって、日本がどんな利益を得られ、
一方で何を失うかというコストの議論がなされたはずだが、果たしてどの程度のものだったのか、疑問だ。
実際、参拝のコストは極めて大きいものだ。
なぜなら、前述のように、中国の「好戦派」に格好の材料を与えるだけでなく、戦後の日本が築き上げてきた、
平和外交などの「戦後史観」をすべて否定してしまうからだ。
いくら「不戦の誓い」をしたところで、中国には細かいメッセージは伝わらない。
中国にとっては、評価の基準は「行くか」「行かないか」という単純なものだ。
コストは、それだけではない。
深刻なのは、この問題で一貫して厳しい態度をとってきた米国の態度を硬化させ、
日米同盟にくさびをいれられてしまう危険性が大きくなる。
では一方で「参拝で得られる利益」は何か。実は、ないに等しいのだ。
「自らの政治信条や信念を守った」という意味で、安倍首相の利益は大きいかもしれないが、
それはただ「言ったことを実行しただけ」であって、国家の利益ではない。(続く)
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