13/05/29 14:18:21.83
>>1の続き
●問題の焦点は強制的な連行があったかどうか
でも一部の理はここまで。慰安婦や公娼が軍と切り離せない関係だった時期は、あくまでもモラルや人権意識が希薄だった時代の話だ。
今の価値観は違う。あるいは当時においても、連合国側の軍隊が植民地化した国の女性たちを強制的に慰安婦として
戦地に連れて行ったとの話は寡聞にして聞かない。
つまりこの問題の焦点は、当時は植民地として扱っていた朝鮮半島の女性たちを、日本軍が強制的に連行したかどうかだ。
そして今のところ、文書としての証拠はない。だからここから先は、世界観や歴史観が問われることになる。
歴史や人に対しての洞察や煩悶が重要になる。
ユダヤ人への最終計画(ホロコースト)を決定したとされるヴァンゼー会議に、ヒトラーは出席していない。
そもそも「最終解決」を意味するヒトラーの文書も、今に至るまで見つかっていない。
敗戦国ドイツを裁くニュルンベルク裁判で連合国側は必死にその証拠を探したが、結局は一枚の紙片すら発見できなかった。
だからといって、ヒトラーがホロコーストに関与していなかったなどと思う人はいない。僕も思わない。
ナチスが権力を掌握する前に書かれた「マイン・カンプ(我が闘争)」でヒトラーはすでに、
ユダヤ人の脅威について執拗なほどに何度も述べている。第2次世界大戦が始まった1939年9月1日にはドイツ国議会で、
「ユダヤ民族がヨーロッパのアーリア民族の絶滅戦争を企てるなら、絶滅させられるのはアーリア民族ではなくユダヤ民族である」と演説している。
側近たちのヒトラーへの過剰な忖度が働いた可能性はあるけれど、それにしたってヒトラーの意向がまったく働いていないとは考えられない。
組織共同体のメカニズムは、明確な指示や通達だけで機能しているわけではない。
政治学者のラウル・ヒルバーグは、特定の機関や特定の予算など存在しないまま、
軍や官僚などいくつかの権力機構が刺激や抑制を相互に作用し続けた帰結として、ユダヤ人絶滅計画は始まったと主張する。
「この企てに加担したのはだれなのか。この事業のためにどんな機構が作動したのか。
絶滅機構はさまざまなものの集合体であった―全作業を担った官庁はなかった。
ある特定の機関が特定の措置の実行過程における指導的役割を果たしたとしても、全過程を方向づけ調整した機関は存在しなかった。
絶滅のエンジンは、まとまりのない、分岐した、とりわけ分散的な機構であった。」
『ヨーロッパ・ユダヤ人の絶滅』上(柏書房)
従軍慰安婦においても、このメカニズムは同様に働いたと僕は推測する。なぜなら多くの人が証言している。元慰安婦だけではない。
「旧日本軍は、明らかに慰安所を威力を持って支配していたのである。学徒兵として太平洋戦争に参加した私は、ソ満国境守備隊に赴任した。
要塞のある「虎頭」は小さな町。そこから少し離れた所にある「完達」の町に、慰安所はあった。
新任の将校に与えられる任務の一つに、慰安所の巡察があった。慰安所に連れてこられた女性たちは、みな朝鮮半島の人たちであった。
無職 尾上壽高 横浜市金沢区89歳」(朝日新聞「声」2013年5月17日)
続く