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◇放射性水素の同位体 「安全」でも情報公開必要
なるほドリ 放射性トリチウムってどんな物質なの?
記者 水素(すいそ)の「放射性同位体(どういたい)」です。同じ元素なのに、原子核(げんしかく)を
構成する中性子(ちゅうせいし)の数が違うため、質量が異なるものを「同位体」と言い、
放射線を出すものが「放射性同位体」です。
Q 水素の兄弟のような関係なの?
A その通りです。通常の水素の原子核は陽子(ようし)1個で構成されていますが、トリチウムは
陽子1個と中性子2個でできています。質量は水素の3倍。三重(さんじゅう)水素とも呼ばれています。
Q 放射性って言うくらいだから、原発から出るんだね。
A 原発からの排水にも含まれますが、自然界にも微量に存在します。
宇宙線という宇宙から飛んでくる高速の陽子や中性子が、大気中の窒素(ちっそ)や酸素(さんそ)と
反応して発生します。日本原子力研究開発機構などによると、年間に地球上で約200グラムが発生し、
それに伴う年間被ばく線量は0・39ミリシーベルトになります。
Q 自然界のどこに存在するの?
A トリチウムの99%はトリチウム水という液体で存在し、空気中の水蒸気や雨水などに含まれています。
水と同じような性質で、水から分離するのが非常に困難です。
Q 身近な存在だとしても、なんだか怖いね。
A 放射線は細胞に損傷を与え、障害を起こす恐れがあります。
ただ、トリチウムが出す放射線の一種「ベータ線」のエネルギーは非常に弱く、皮膚を通過できず、体の内部まで
入ることはできません。放射能の強さが元の半分になるまでの時間、つまり半減期(はんげんき)は12・3年です。
Q 飲んでも問題ないの?
A 体内に取り込んでから排せつによって量が半減する生物学的半減期は、トリチウム水が10日ほど、
トリチウム水を含む有機物の場合は約40日です。放射性プルトニウムは体内に入ると骨や肝臓などに
蓄積しますが、トリチウムは水として存在しているので、体内組織に蓄積することなく水分として尿と一緒に排出されます。
Q そう言われても安心できないよ。
A 科学的に「安全、大丈夫」だとしても、地元の合意なしにトリチウムを含む水を海に放出すれば、新たな
風評(ふうひょう)被害を招きかねません。福島第1原発で増え続ける汚染水の現状などをきちんと情報公開し、
国民が納得する形で決着させていくことが大切です。(科学環境部)
毎日新聞 2013年03月06日 東京朝刊
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