12/10/28 23:46:25.15
ソース(朝日新聞) URLリンク(book.asahi.com)
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「在特会」という団体。知っている人はよく知っているが、知らない人はまったく知らない。正式名称は「在日特権を許さない市民の会」。
インターネットで、リベラルな論調をバッシングする「ネット右翼」と呼ばれる人々がいるが、在特会は、このネット右翼が街頭に出てきて
騒ぎ出した集団であると考えればよい。本書は、安田浩一による、在特会についての渾身(こんしん)のルポである。今年度(2012年度)
の講談社ノンフィクション賞などを受賞している。そうした賞に値する力作だ。
在特会の主要なターゲットは、在日コリアンである。「主要な」としたのは、敵とされるターゲットが「反原発運動」「パチンコ」「フジテレビ」など
とどんどん拡散していく傾向を見せているからだが、ともあれ、中心にあったのは在日コリアンである。
在特会の運動のスタイルは、これまでの社会運動とはかなり違う。労働運動や学生運動などの左翼系の運動と異なるのはもちろんだが、
街宣車を駆使して、演説だけをする伝統的な右翼の運動とも異なる。彼らは街頭で、「ゴキブリ朝鮮人」とか「叩(たた)き殺せ」とかといった
聞くに堪えない罵詈(ばり)雑言を吐き、興奮したときには、犯罪のレベルの乱暴狼藉(ろうぜき)に及ぶ。
在特会が結成されたのは、07年1月だという。在特会の「広報局長」によると、「母体となったのは『2ちゃんねる』のようなネット掲示板で、
保守的な意識をもって〝活動〟してきた人たち」だそうだ。桜井誠という1972年生まれの男性が会長で、彼が主宰していた「東亜細亜
問題研究会」なるネット上の「勉強会」を発展的に解消するかたちで、在特会は作られた。「桜井誠」というのは本名ではなく、「ハンドル
ネーム」である。在特会のメンバーはほとんどハンドルネームで呼び合い、よほど親しくならない限り互いの本名や職業を教え合うこともない
とのこと。2ちゃんねるなどのネットの関係が、そのまま現実の社会生活に延長されていることが、こうした習慣にも現れている。ともあれ、その
桜井誠は演説が巧みで、在特会員の間でカリスマ的な人気をもっている。本書によれば、桜井はかなり勉強もしていて、知識も豊富である。
ところで、在日特権とは何だろうか。在日コリアンは「特権」などもっていただろうか。在特会が批判している、在日の「四大特権」は、
「永住資格」「朝鮮人学校補助金交付」「生活保護」「通名」の四つだが、本書にていねいに解説されているように、少なくとも日本人が
うらやましくなるような「特権」ではない。たとえば、生活保護を受給している世帯の比率は日本人世帯よりも韓国・朝鮮人世帯において
高いが、それは、生活保護が給付されるような困窮世帯の割合が後者において高いからであって、韓国・朝鮮人に優先的に生活保護費
が回されているからではない。在特会のメンバーはいつもハンドルネームを使っていて、本名を隠しているのに、在日の人たちが通名を使うのが
どうしてそんなに不愉快なのか、と思ったりもする。
(>>2以降に続く)