12/05/12 16:57:43.93
わしは「ゴーマニズム宣言」で、オウム真理教、薬害エイズ事件、歴史教科書問題など20年間にわたって論争してきたが、
橋下徹みたいな幼稚な奴は見たことがない。わしの批判に対して「面識のない相手を呼び捨てにするな」とツイッターで連日罵倒
し続けた。彼は市長で歴然とした公人であり、権力者だ。「俺を呼び捨てにするな」とブチ切れるのは、常軌を逸している。
橋下は日教組を叩き、君が代を歌わせているが、エセ愛国者だ。君が代を強制しておいて、「大阪都」などと言っている矛盾を
わしが指摘しても、彼は絶対に訂正しない。
日本で「都」といえば、天皇陛下がお住まいになられているところ。1923(大正12)年の関東大震災後、天皇が京都にお戻りに
なるのではないかと噂されたので、当時摂政だった昭和天皇が詔書で「東京は帝都の首都」と布告された。このような経緯があり、
43(昭和18)年に東京府と東京市を統合する際、東京「都」という名称が採用されたわけだ。単に府と市が再編したら「都」というのは、
天皇陛下がいらっしゃるから「都」なのだという歴史性を軽んじている。
(中略)
大阪市は、市立学校の教職員に君が代斉唱時の起立を義務づけたが、強制は行き過ぎだ。04年秋の園遊会で、陛下は、
学校現場での国旗掲揚と国歌斉唱について「やはり強制になるということではないことが望ましい」と話された。
橋下の尊皇心の怪しさは、天壌無窮の神勅から継承される「稲」の国体を破壊する危険のあるTPPに賛成していることでも歴然。
橋下は「不利なことは蹴れば良い」などと言うがTPPは「例外なき関税撤廃」「非関税障壁の撤廃」が原則で、いいとこ取りができる
ようなものではない。
TPPで国内問題をショック療法しようなどという発想は、国家の命運をバクチで決める政治家失格の行為だ。外需に依存せざるを
得ない韓国と違って、日本は高度成長のころからGDPに占める外需はずっと15%程度で、内需で成り立つ国だ。まず内需を活性化
させるべきであって、公共投資する分野はいくらでもある。
■「脱原発」は本当か?
90年代から、民間の弱肉強食至上主義を促進する規制緩和に血道を上げ、構造改革した結果が現在の格差社会だ。
非正規雇用者が結婚もできない、子供も産めないと、少子化への道をまっしぐら。新自由主義的な経済政策の破綻は、もう
世界中で見えてきた。フランスも、サルコジ大統領の新自由主義によって、失業者が増え、大統領選の結果も危うい。
橋下は「道州制」を主張するが、「平成の大合併」の失敗を、さらに大きく繰り返すだけだ。自治体の領域が広がるから周辺部が
寂れ、行政サービスも低下するだけ。むしろ昔の藩の規模の基礎自治体に再編するか、学区制を単位にした方がはるかにいい。
橋下の「脱原発」も疑わしい。橋下は4月26日、関西広域連合の会議で「節電新税」を提案した。企業などに節電への
奨励金を支払うために、府県民から税金をとるべきだと言い始めたのだ。電力会社が負担すべき金を、住民が肩代わりするというのは、
「脱原発」の立場からの発想ではない。彼の「脱原発」は単なるポピュリズムに過ぎない。
橋下は自分を批判する者には、「バカ」とか「クソ」とか「学者さんは」と嘲笑したり、「官僚が」とバッシングしたり、漫画家であるわし
に対しては「ガキ相手だろう」とか、子供のケンカみたいに罵倒して、現実の政治を「勉強しろ」と言い出す。現実の政治は
大変なのだと、国民と政治家との間に壁を作り始める。橋下の理屈でいけば、政治家以外は政治家を批判できないということになる。
つまり橋下は、民主主義の前提である国民による自由な議論や批判、権力を監視するマスコミや言論人の存在までを全否定して
いるのである。
このような金正恩並みの幼稚な権力者を「突破力がある」とか「決められる政治家」などと提灯持ちしている日本のマスコミや
知識人たちは、すべて馬鹿である。さっさと民主主義をやめて北朝鮮のように「マンセー、橋下同志!橋下将軍!」と歓喜すれば
いいのだ!
ソース(週刊文春 5/17号 41ページ 漫画家・小林よしのり氏)