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■概念覆す「甘いキムチ」 日本人の嗜好にマッチ
社内試食で営業部は「こんな甘いキムチは売れない」と酷評。「自由」と言った荻野社長も「ベテランの男性社員が出していたら
即却下していた」と振り返る。それでも、常識をぶち破らないと変化は起こせない─覚悟を決めた。
発売直後には「国内外の業者の方から『これはキムチではない。正しい作り方を教えてやる』との指摘があった」と、営業本部兼
開発室の渡辺辰也部長は苦笑する。だが、すぐに全国規模で人気に火がついた。女性や子どもを中心に支持を集め、半年後
には長年キムチ首位の座に就く東海漬物の「こくうま」を脅かすまでになった。
容器やパッケージデザインでも小さな工夫を重ねた。キムチの容器は400グラムの四角または円形が主流だったが、その半分の
200グラムで、長方形のスリムな容器を採用した。「少子高齢化が進む中、食べ切れる少量サイズの需要は高まっている」(高橋氏)。
デザインも、赤や黄が主流の売り場で、それまでなかった黒の背景に白文字を選んだ。今では、容器、デザインとも他社から類似品が
続々登場している。
広告宣伝でも業界常識を覆した。当時、漬物メーカーは、新商品に派手な広告は出さず、地道に売り場での浸透を図るのが
一般的だった。「こくうま」も市場での浸透に合わせて広告費を逐次投入していた。短期間でのヒット商品は生まれにくい以上、
積極的な先行投資はリスキーすぎると考えられていたからだ。
が、ピックルスは「広告宣伝費を増やし、数量を増やせば採算はよくなる」(荻野社長)と攻めに出た。「ご飯がススム」の発売当初
から広告やテレビCMを積極投入。11年2月期は、前期比倍増の1・4億円の広告宣伝費を投じ、今後も増やす方針だ。
「ご飯がススム」は日本のキムチとして完全に定着。「一番人気の商品で、売れ続けている」(イトーヨーカドー木場店の金子哲
副店長)。増量タイプのほか大根キムチのカクテキなど新商品も投入した。「ご飯がススム」効果でピックルスの業績は上り調子。
12年3月期も不採算事業撤退分をカバーし増収を維持、10年3月に稼働した関西工場(京都府)の稼働率向上もあり、
最高益を更新する見込みだ。
グラフ=キムチ効果で過去最高益へ
URLリンク(lib.toyokeizai.net)
■国内基盤の強化終え次の目標は世界進出
地場メーカーが大半の漬物業界にあって、ピックルスの全国展開は頭一つ抜けている。セブンの店舗展開に合わせて各地に工場
を造ってきたからだ。13年上旬には、広島に新工場を建設予定。「これで全国を一通り網羅する」(荻野社長)と、これまで手薄
だった中国地方以西の攻略に自信を見せる。
躍進するピックルスは、すでに次を見据えている。これまで海外展開はしないと公言してきたが、流通各社が海外進出を急ぐ中、
「もう無視はできない。アジアで漬物をどう売るか真剣に考えている」と荻野社長は意気込む。海外でカリフォルニアロールがすしの
標準になったように、世界的に受け入れられるのは、本場の韓国製キムチではなく、日本製の甘いキムチかもしれない。
今後の課題は、製造工程の機械化だ。手作業が主流の業界にあってピックルスも例外ではない。が、国内基盤を固めて世界で
戦うには機械化は避けて通れない。さらに「採算を大きく左右する野菜の仕入れ価格を安定させるため、契約農家を増やす必要
がある」と、漬物業界に詳しいインベストメントブリッジ社の廣井哲也アナリストは指摘する。
地味だった漬物業界に現れた“革命児”が、「ニッポンの漬物」を世界に羽ばたかせる日も近い。
(終わり)