12/04/23 08:33:01.48 DaXGtCHN
しずか編 第二章
「前進」
翌日、身支度を整えてしずかは駅前へと向かった
気分は乗らない、なぜ簡単に約束などしたのかと自己嫌悪すらしている。
約束の時間まで後15分、どうやら間に合ったようだ
「あれ?待たせちゃった?」
時計が12時に重ね合う5分前に同僚がやってきた
『大丈夫よ、待っていないわ。それより早く教えて頂戴』
しずかは用件を済ませて早急に帰路へ着きたかった
「まあ慌てないで飯でも行こう」
同僚は親指で後ろの駅ビルを指し示す
『…わかったわ』
また時間が遅く感じる…彼の会話など頭にも入ってこない、適当に相槌をうって
この空間を過ごそう、要件さえ聞いてしまえば彼には、これと言って興味もない
きっと明日には今、何を食べたかさえも覚えていないだろう
「…源さん…源さん…聞いてる?」
『ええ…聞いてるわ…そろそろ出ましょ?』
しずかは伝票を取り支払いを済ませる
「俺が出すよ!」
『大丈夫、今日は私が無理を言ったのだからこれくらいはさせて』
借りだけは作りたくない。これが本音だ。
『さあ、食事も済んだしパチスロの事教えて頂戴』
「ああいいよ、でもその可愛いワンピースお気に入りだったら止めておきなよ?」
『な、なんでよ!か、関係あるの?』
「パチンコ屋なんてタバコ臭くて白い服なんてヤニだらけになる。
それよりデートの方が幾分マシかなって」
『別に大丈夫よ!早く教えて!』
しずかには珍しく表情を強張らせながら感情的に話した
「そんなに怒るなって。わかったよ」
同僚は眉間にシワを寄せ軽く舌打ちをした
(お嬢様ってのはお堅い事…)
目的地はそう遠くは無かった。同じ駅ビル内にあるパーラー
小さく骨川グーループと書いてあったが、しずかに気付く事など有るはずもない
入口を開いた瞬間に騒音と煙草の臭いが立ち込めた世界が広がる
初めて見る光景にしずかは戸惑いを隠せなかった
『…何…これ』
「ここにお目当てのパチスロがあるぜ。なんだ…?おい止めるか?」
『…いいえ…行くわ…少し驚いただけ…ごめん』
同僚は慣れた足取りで2階へとしずかを案内する
後戻り出来ない一歩をしずかは自ら歩みだした