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身近だった「トノサマガエル」が消えた…10年ぶり観測も「準絶滅危惧種」 6月27日(金)11時10分
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滋賀県彦根市の彦根地方気象台で今年4月、「トノサマガエルの初見」が観測された。この観測が記録された
のは、実に10年ぶりのことだ。全国各地の気象台は、「ソメイヨシノの開花」や「ウグイスの初鳴き」など、
四季折々に応じて動植物の観測も行っている。しかし、トノサマガエルは環境省のレッドリストに「準絶滅危惧
種」に指定されるまでに減少しており、すでに観測対象から除外している気象台や測候所もある。彦根では久々
の“再会”にわきあがったが、トノサマガエルはすっかり「身近な生き物」ではなくなっている。(桑波田仰太)
【フォト】「トノサマガエル」はどこに…
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■用水路の水面を“ピョン”
彦根地方気象台がトノサマガエルの初見を記録したのは、今年4月30日。男性職員が、気象台から約2キロ
離れた水田脇を歩いていたところ、用水路の水面を“ピョン”と跳ねたカエルを発見した。職員が追いかけて水
の中に目をやると、胴体の黒い斑点などからトノサマガエルと確認された。
トノサマガエルの初見を観測したのは、平成16年5月6日以来、10年ぶり。久々の出来事に、同気象台の
森岡伸夫調査官(51)は「以前は、気象台の敷地内でも苦労することなくトノサマガエルの姿をみることがで
きたのに…」と振り返る。
同気象台は、昭和28年からトノサマガエルの初見を観測している。平成16年までは昭和51年を除いて毎
年3月下旬から5月上旬にかけて、トノサマガエルの初見が記録されている。
しかし、最近は気象台周辺でも、宅地開発で水田が減ったり、用水路もコンクリートで固められたりするなど
して、明らかに生息数が激減しているという。実際に、トノサマガエルの減少は全国的な問題になっており、平
成24年度には環境省のレッドリストに「準絶滅危惧種」として新たに記載されたほどだ。
■トノサマガエル観測は全国で半数以下
全国の気象台は、生物に及ぼす気象の影響をみるとともに、気象状況の推移を把握するため、動植物を指標に
した「生物季節観測」と呼ばれる観測を続けている。よく知られているのは、ソメイヨシノの開花日や満開日な
どだ。
各地の気候や環境に合わせて対象となる動植物は異なるが、彦根地方気象台では、動物はヒバリやウグイスの
初鳴き日、トノサマガエルやツバメ、モンシロチョウの初見日など11種類の11現象を、植物はウメやツバキ
の開花日、イチョウの発芽日や落葉日など12種類の16現象を、それぞれ観測している。
「初見日」は、文字通り対象の動物を初めて見た日のことを指す。観測の性格上、職員らが自ら動き回って動
物を探し出すのではなく、暮らしの中で自然に見つかった状況を記録しているという。観測の範囲は、各気象台・
測候所の半径5キロ圏内と定められている。
気象庁によると、現在もトノサマガエルの観測を続けているのは全国58ある気象台・測候所のうち、半数以
下の24施設にとどまる。平成23年には、大阪管区気象台や京都地方気象台などが観測対象から除外した。