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量子か否か、論争のあるコンピュータは通常のものより速くない
Adrian Cho, June 19, 2014 - 2:15pm
量子アニーラー。問題を解くのに、D-Wave社のチップは小さな超伝導体のリングで作られた
512個の相互作用する量子ビットの最低エネルギー状態を探し求める。
URLリンク(news.sciencemag.org)
従来のコンピュータよりはるかに速い画期的な量子マシンとして販売されたD-Waveコン
ピュータは、通常のライバルより高速に問題を解けないことが新しいテストで示された。
この論争のある装置のテストは今日サイエンス誌オンライン版に記述された。このテストを
これまででもっとも公平な比較だと言う研究者もいる。しかしD-Waveはこの研究で使われた
比較はその革新的なチップができることを示すには簡単すぎるものだったと主張している。
「これはD-Waveマシンの性能について行われたもっとも徹底的で精密な研究だと思われる」
とテキサスA&M大学(カレッジ・ステーション)の計算物理学者、ヘルムート・カッツグラバー
(Helmut Katzgraber)は話した(彼は研究に関与していない)。だが、量子コンピュータ
科学者でD-Waveの事業開発主任のコリン・ウィリアムズ(Colin Williams)は、ベンチマーク
として使われた問題は「量子高速化を証明するのにまったく適切でない選択」だったと話した。
カナダ、バーナビーで設立されたD-Waveシステム社はロッキード・マーチン社とグーグル社に
マシンを販売している。この会社は1000万ドルもする以前のバージョンのマシンが通常の
コンピュータより35,500倍高速だったと主張していた。だがD-Waveのマシンをテストする
のに、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の物理学者、マティアス・トロヤー(Matthias
Troyer)と共同研究者たちは単に通常のコンピュータと競走させはしなかった。彼らは
問題のサイズを増やしながら解くのに必要な時間を測定した。それが重用なのは、量子
コンピューティングの背景にある全体構想が、量子コンピュータでは計算時間の増え方が
通常のコンピュータよりはるかにゆっくりになることだからだ。特に、一人前の「ユニ
ヴァーサル」な量子コンピュータでは、巨大な数を因数分解するときに、数のサイズが
増えるとともに解く速さが通常のコンピュータに比べてどんどん高速になるはずだ。
だが、D-Waveマシンはユニヴァーサルな量子コンピュータではなく、もっと限定された
「量子アニーラー」だ。そのプロセッサには電流が流れる超伝導ループでできた、量子ビット
(キュービット)の2次元アレイが格納されている。量子ビットはアップ、ダウン、あるいは
(量子の奇妙さのおかげで)アップとダウンの両方を同時に指し示す小さな磁石のように
働く。各量子ビットは特定の他の量子ビットと、プログラムできるリンカーを通して相互
作用させられ、量子ビットは同じ向きか逆の向きかのどちらかを指すことで自身のエネル
ギーを低くできる。このアイディアはチップ内の数百ヶ所の相互作用を設定することで
プログラムをエンコードし、量子ビットの最低のエネルギー「基底状態」を見つけることに
よってそれを解く、というものだ。
それを行うために、マシンは各量子ビットをアップ&ダウン状態にして始め、ゆっくり
相互作用をオンにする。次にシステムは、展開されたエネルギー地形の中から最も深い
谷を探して石が転がるように、最低エネルギー状態を探し求める。非量子デバイスでは、
熱アニーリングと呼ばれるプロセスを通して、熱エネルギーの揺らぎが石を地形上の低い
スポットへと動かす。対するD-Waveマシンでは、石は低いスポットの間を量子力学的に
「トンネル」して、もっと速く最低点を見つけると推定されている。パターン認識や機械
学習などの問題では、それが量子マシンの強みになると考えられている。
>>2以降につづく
ソース:ScienceNOW
Quantum or not, controversial computer runs no faster than a normal one
URLリンク(news.sciencemag.org)
原論文:Science
Troels F. Ronnow, et al. Defining and detecting quantum speedup.
URLリンク(www.sciencemag.org)
プレスリリース:Eidgenossische Technische Hochschule Zurich(19.06.2014)
“The ball is in D-Wave’s court.”
URLリンク(www.ethz.ch)