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ヒトの皮膚由来の幹細胞を骨細胞に転換、マウスに移植=米研究者グループ
科学者たちは実験用の皿の中でヒトの皮膚由来の幹細胞から骨のかけらをつくり、それをマウスの中に移植
するのに成功した。患者のため骨の代替物を育てることに向けた第一歩だ。
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Tetra Images
科学者たちは、骨の損傷や欠陥を、合成素材ないし人体の他の部分からとってきた骨を使って修復しようと
長年努力してきた。しかし、こうした手法には限界があった。
世界が高齢化する中で、老化や負傷に関連した「骨の欠陥を直す治療がますます必要になっている」と、
ニューヨーク幹細胞財団の細胞エンジニアで今回の研究に関与した研究者ジュセップ・マリア・デペッポ博士は言う。
研究結果は6日発行の米科学アカデミー紀要に掲載された。
デペッポ博士とそのチームはリプログラミング(分化細胞を未分化細胞に変化させる)という手法を用いて、ヒトの
皮膚細胞を体の他のすべての細胞になれる胚性(embryonic-like)幹細胞(ELSC)に転換した。
特定の化学物質を添加すると、幹細胞は最終的に骨を形成するような細胞になった。この骨細胞を一種の
スカフォールド(皿、足場)に置き、成長して立体構造になるように育てた。スカフォールドは雌牛の骨を化学物質の
中で洗浄して残ったコラーゲンでできている。
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研究グループはヒトの皮膚から取った細胞をリプログラミングし牛の骨から取ったコラーゲンをベースにした台の上で
育てネズミに移植した
このスカフォールドに骨細胞を植え付けたあと、それをバイオリアクター(固定化酵素や微生物を触媒として物質の
分解・合成などを行う装置)の中に置き、栄養分を供給したり不純物を除去したりした。その結果、骨のかけら
(それぞれ約16平方ミリ)がスカフォールドの中で生育した。
実験のため、この骨のかけらを免疫システムのないマウスの皮膚の下に外科的に埋め込んだ。免疫システムが
あると骨を拒絶するからだ。やがて血管がマウスの体からこの骨の内部に浸透し始めた。
デペッポ博士は「マウスの体はこの骨を自分の体の一部と認識し、それを統合し始めた」と述べた。
研究者たちは、実験室で骨のかけらを製造してそれに血管を浸透させ、動物の体内で骨の損傷を修復できるか
どうか見極めたいとしている。この手法が成功すれば、ヒトでも実験するかもしれないという。ただしそれは数年後に
なりそうだ。
皮膚細胞を胚性幹細胞に転換する危険の一つは、このプロセスが癌性の腫瘍を発生させる場合があることだ。
科学者たちはこれを阻止するためリプログラミングのプロセスを精密化する努力を払っている。最新の研究で、研究
者たちは、実験室で得られた骨をマウスに移植して12週間後、腫瘍が一切形成されておらず、骨繊維が成熟した
ことを発見した。
研究者は「こうした結果は、骨の代替物の安定性を示す」と述べている。
科学者たちは骨を作る代替方法を実験している。ヒトの胚からとった幹細胞のような他の細胞を用いる方法だ。
しかしこの手法は倫理的に問題がある。
また、患者の骨髄から取った幹細胞から骨を作ることも可能かもしれない。しかし、それにはからだに負担の
大きい上、幹細胞、とりわけ高齢の患者から得られた幹細胞の質が劣化している恐れがある。
The Wall Street Journal 2013年 5月 07日 11:40 JST
URLリンク(jp.wsj.com)
Engineering bone tissue substitutes from human induced pluripotent stem cells
Giuseppe Maria de Peppoa, Iván Marcos-Camposb, David John Kahlera, Dana Alsalmana, Linshan Shanga, Gordana Vunjak-Novakovicb, and Darja Marolta
PNAS May 7, 2013 Published online before print May 7, 2013, doi: 10.1073/pnas.1301190110
URLリンク(www.pnas.org)