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生物の遺伝情報は、アデニン、グアニン、シトシン、チミンという4つの塩基を組み合わせた配列でDNA上に
記述されています。DNAは、この4種類の塩基によってタンパク質合成の設計図として機能するほか、抗体や
酵素としても機能します。
1962年に米国の研究者A・リッチが「DNAの塩基の種類を増やすことができれば、DNAの情報や機能を拡張できる
可能性がある」という仮説を唱えました。これを証明するためには、塩基の種類を増やしたDNAが正確に複製
されるような新しい塩基を人工的に作り出す必要がありました。理研は世界的な開発競争の中で、着実に研究の
成果を積み上げ、2009年には人工塩基対を作製して、天然型塩基対に近い精度で複製させることに成功しました。
今回、その人工塩基をDNAに組み込み、抗体のように標的タンパク質に結合してその働きを制御する「DNAアプタマー」
を作製しました。このDNAアプタマーに人工塩基は2、3個しか入っていませんが、天然型塩基だけで構成される
DNAアプタマーと比較して標的タンパク質との結合能力が100倍以上も向上しました。作製には従来のSELEX法を
改良した手法を用いました。DNAの疎水性部分と結合しやすくするため、ランダムに配列されたDNA断片に疎水性の
人工塩基を組み込んだ5種類の塩基からなるライブラリーを合成し、これを用いて標的タンパク質に結合するDNA
アプタマーを作製しました。
今回、DNAに人工塩基を加えることで、DNAの機能が飛躍的に向上するという50年前のリッチの仮説を世界で初めて
実証しました。タンパク質結合能力と選択性に富む人工塩基を含んだDNAアプタマーは、従来の抗体技術に
代わって診断・検出・医薬品開発分野での応用が期待できます。
▽画像 人工塩基を含むライブラリーを用いたDNAアプタマーのSELEX法
URLリンク(www.riken.go.jp)
▽記事引用元 理化学研究所60秒でわかるプレスリリース(2013年4月8日)
URLリンク(www.riken.go.jp)
▽Nature Biotechnology
「Generation of high-affinity DNA aptamers using an expanded genetic alphabet」
URLリンク(www.nature.com)