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>>1の続き
そこで、このShn-2 KOマウスの前頭皮質の遺伝子発現変化を「ジーンチップ(ガラスや半
導体の基板の上にDNAを貼り付けたもので遺伝子がどのように発現しているかを網羅的に
調べることができるチップ)」で調査を行い、遺伝子の発現パターンをバイオインフォマティク
ス的手法で解析した結果、Shn-2 KOマウスの脳で発現量が変化している遺伝子の多くは、
統合失調症患者の死後脳(前頭葉)でもほぼ同様に変化していることが確認された。これは、
同マウスの脳と統合失調患者の死後脳の遺伝子発現パターンの間には類似性があること
が示されたことを意味する。
画像2は、Shn-2 KOマウスの脳と統合失調症患者の死後脳の遺伝子発現パターン。AとB
は、Shn-2 KOマウスの前頭葉における遺伝子発現パターンと、統合失調症患者の死後脳の
遺伝子発現パターンの比較したもので、100程度の遺伝子が共通して変動していること、なら
びにほとんどの遺伝子発現変化の増減の向きが同じであることが確認された。
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画像2。Shn-2 KOマウスの脳と統合失調症患者の死後脳の遺伝子発現パターン。Cは、共通
して増加もしくは減少しているしている遺伝子の一覧。ピンクがShn-2 KOマウスとヒト統合失調
症の両方で増加、青色は両方で減少している遺伝子を表している。*は炎症や免疫反応に関
係する遺伝子で、+はシナプス伝達やシナプス可逆性に関係する遺伝子。増加している遺伝子
は炎症や免疫反応に関係しているものが多く、減少している遺伝子にはシナプス伝達やシナプ
ス可塑性に関係しているものが多かったという
さらに同マウスの脳を調べたところ、「パルバルブミン陽性細胞(パルバルブミンは細胞内シグ
ナル伝達に重要なカルシウムイオンに結合するタンパク質の1つ)」の減少、「GAD67(グルタミン
酸脱炭酸酵素の1つで、この酵素の働きにより、グルタミン酸からγ-アミノ酪酸(GABA)が作ら
れる)の発現低下」、「大脳皮質の薄化」、「脳波の内のガンマ波の低下」など、統合失調症患者
の脳で報告されている特徴が多く見られ、特徴という点においても統合失調症患者と似ている
ことが確認された。
画像3は、同マウスの脳の解析結果。左上の2点の蛍光顕微鏡画像とその右の棒グラフは、
野生型マウスとShn-2 KOマウスのパルバルブミンを発現する細胞数の比較。Shn-2 KOマウス
の方の同細胞が減っていることがわかる。左下のグラフは、αからγまでの脳波のパワー値。
γ成分が低下していることが分かる。
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画像3。Shn-2 KOマウスの脳が統合失調症患者の脳の特徴を備えていることが分かった
加えて、同マウスの海馬歯状回の神経細胞が、発達期に一度、成熟細胞マーカー「カルビン
ジン」を発現しながらも、その後、成育するに従ってほとんど発現しなくなり、逆に未成熟細胞の
マーカーであるカルレチニンの発現が増加し、電気生理学的な性質も未成熟な神経細胞に似て
いることも明らかになったという。これは、同マウスでは、成育するに従って再び未成熟な細胞
の特徴を持つようになり(脱成熟)、成体ながら歯状回全体がいわば未成熟な状態(未成熟歯状
回)であることを示すもので、統合失調症の発症が青年期以降であることと一致するとする。ち
なみに、統合失調症患者の死後脳で海馬の歯状回が未成熟な状態にあることはすでに研究グ
ループの別の研究から明らかにされているという。
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画像4、Shn-2 KOマウスの海馬歯状回が未成熟であることを示す証拠となる画像。Aは、成熟
細胞マーカーのカルビンジン(上)と、未成熟細胞のマーカーであるカルレチニン(下)の蛍光顕
微鏡画像。カルビンジンの発現が減少し、逆にカルレチニンが増加していることがわかる。B
は、海馬歯状回の神経活動電位(スパイク)のグラフ。Shn-2 KOマウスの神経細胞は発火しや
すく持続しない傾向があることが判明した。電流刺激によるスパイクの誘発実験において小さ
い電流で発火するものの(C)、誘発されるスパイク数は少ない(D)など、未成熟な神経細胞の
特徴を示していることも確認されている
以下、ソース参照。