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植物の光合成のように、太陽光のエネルギーを使って水と二酸化炭素からアルコールなどの有
機物を工業的に製造する「人工光合成」の研究が日本で急展開している。鍵となる物質の構造
解明や実証実験の成功など世界初の成果が相次ぎ、エネルギー問題や地球温暖化を解決する夢
の技術が実現に近づきつつある。
■原料は無尽蔵
植物は太陽光のエネルギーを利用して光合成を行い、水と二酸化炭素から、でんぷんやブドウ糖
を作り出す。これと同じ原理でエネルギー源や化学原料となる有機物を作るのが人工光合成だ。
地球温暖化は、温室効果をもたらす二酸化炭素が大気中に増えることが原因とされる。二酸化炭
素を消費して資源価値のある物質を作れば、温暖化対策への貢献と同時に、枯渇が懸念される
石燃料の代替も可能になる。
太陽光は地球に降り注ぐ1時間分だけで、人類が必要とする1年分に相当するエネルギー量があ
る。二酸化炭素や水も地球に無尽蔵にある。人工光合成は原料コストがほぼゼロで、地球規模の
問題を一挙に解決できる革新技術として注目されているのだ。
■ノーベル賞が機運
研究の機運を高めたのは2010年にノーベル化学賞を受賞した根岸英一・米パデュー大特別教
授だ。受賞直後、「温暖化やエネルギー問題の解決に大きな可能性を秘めた分野だ」と文部科学
省に研究支援を要請。受賞理由の金属触媒を使って実現を目指し、プロジェクトを立ち上げた。
11年4月、大きな成果を挙げたのが大阪市立大の神谷信夫教授のチームだった。
植物の光合成は(1)太陽光で水を酸素、電子、水素イオンに分解する「明反応」(2)得られ
た電子、水素イオンに由来するエネルギーで二酸化炭素からでんぷんなどを作る「暗反応」-の
2段階で行われる。
明反応の水分解は、マンガンクラスターという物質が触媒の役割を果たしていることが分かっ
いた。だがごく微細なため、その構造は長く不明だった。
そこで神谷教授は大型放射光施設「スプリング8」(兵庫県)でX線を照射し、原子間の距離が分
かるオングストローム(1億分の1センチ)単位の高精度で解析。マンガン4個、カルシウム1個
、酸素9個の原子から成る立体構造を世界で初めて突き止めた。
この成果は、米科学誌サイエンスが同年の10大ニュースに選ぶ画期的な業績となった。マンガン
クラスターは人工的に合成できていないが、「似た構造の物質を作れば人工光合成の触媒になり得
る」(神谷教授)からだ。世界で開発競争が始まった。
>>2に続く