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マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、水蒸気を吸収することで形状が変化する
高分子フィルムを開発した。フィルムの連続的運動を人工筋肉や環境発電デバイスとして利
用できるとみられる。2013年1月11日付けの Science に論文が掲載されている。
周囲の水蒸気を吸って発電できるため、環境センサ用の自立電源として利用すればセンサの電
池交換が不要になる。ロボットの手足を動かすための人工筋肉としても利用可能であるという。
研究リーダーのMIT教授 Robert Langer 氏は、「機械的運動を電気に変換する効率がより高くな
れば、応用範囲はさらに広がる」と話す。
システムの大規模化が実現すれば、川や湖などに設置する水蒸気発電機や、発汗を利用するウェ
アラブルエレクトロニクス用小型電源などにも応用できる可能性があるとする。
今回開発されたフィルムは、2種類の高分子(ポリピロールとポリオール-ホウ酸塩)を結合させ
たネットワークでできている。ポリピロールは強度がある柔軟な母材であり、構造支持体として
機能する。ポリオール-ホウ酸塩は軟らかいゲルであり、水を吸うと膨張する。
先行研究で作られた水応答性フィルムはポリピロールだけを使っており、極めて弱い応答しか得
られなかった。ポリオール-ホウ酸塩と組み合わせることで、変形量が飛躍的に増大し、より強
い力を出せるようになった。
水応答性フィルムでは、乾燥した環境と水分を多く含む環境の間の水勾配から生じるエネルギー
が利用される。膜厚20μmのフィルムを微量の湿気を含んだ表面上に置くと、フィルムの下層部が
水蒸気を吸収することで変形し、表面からフィルムが巻き上がるような動きが生じる。
巻き上がったフィルムが空気に曝されると、水蒸気は急速に放出される。
フィルムはでんぐり返しして再び表面上にもどり、以下同様に繰り返す。
この連続的な動きによって、水勾配の化学的エネルギーが力学的エネルギーに変換される。
このようなフィルムは、アクチュエータや発電デバイスとして働くことができる。アクチュエ
ータ材料としては非常に大きな力を作り出せる。
研究チームは、25ミリグラムのフィルムによって自重の380倍の重さのスライドガラスを持ち
上げられることを実証した。
自重の10倍の重さの銀ワイヤを運ぶこともできた。
水だけをエネルギー源とするフィルムによって、現在小型ロボットの手足制御に使われている
電気駆動のアクチュエータを代替できる可能性がある。
その場合も大量の水は不要で、極めて少量の水蒸気があれば足りる。
また、温度や酸性度に応答するアクチュエータと違って環境条件の操作が必要ないことも、今
回のフィルムの長所であるという。
高分子フィルムと圧電材料を組み合わせることで、力学的エネルギーを電気に変換することも
できる。今回のシステムでは周波数0.3Hz程度の交流電流、1.0V程度のピーク電圧が確認されて
おり、平均5.6ナノワットの出力で発電が行える。これをキャパシタに蓄電して、温度センサや
湿度センサなどの超低消費電力のマイクロデバイスの電源として利用することができるという。
SJNニュース
URLリンク(sustainablejapan.net)
人工筋肉の動画
URLリンク(www.youtube.com)
Science/impact factor 31.20(2011年)
「Bio-Inspired Polymer Composite Actuator and Generator Driven by Water Gradients」
URLリンク(www.sciencemag.org)
*依頼がありました
スレリンク(scienceplus板:87番)