12/12/15 23:53:17.66
京都大学は12月7日、ヒト人工多能性幹(iPS)細胞中の全タンパク質(プロテオーム)に対し、独自の計測システム
を用いた発現解析を行い、約1万種のタンパク質の発現量プロファイルを取得することに成功したと発表した。
成果は、京大 薬学研究科の石濱泰教授、iPS細胞研究所(CiRA)の中川誠人講師、同・山中伸弥所長(教授)らの
共同研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、12月4日付けで「Journal of Proteome Research」に掲載された。
タンパク質は細胞の機能制御の主役であり、機能解析をする上でその全体像(プロテオーム)をとらえることが
必須だ。しかし、タンパク質の設計図であるゲノムや遺伝子に比べるとその計測は困難であり、ヒトゲノムや
ヒト遺伝子が明らかになった現在でも、ヒトタンパク質の全貌はわかっていない。
このヒトプロテオームのすべてを明らかにすることを目的とした「ヒトプロテオームプロジェクト」が、現在
ヒトプロテオーム機構による国際プロジェクトとして進行している。石濱教授らはこのヒトプロテオーム
プロジェクトの日本チームの一員であり、大規模プロテオーム解析のための独自の計測システムの開発に取り
組んでいるところだ。
今回の研究では、自家製のメートル長キャピラリーカラムを用いる独自の「ナノ液体クロマトグラフィー-
タンデム質量分析(nanoLC-MS/MS)」システムである「ワンショットプロテオミクスシステム」を用いて解析が
行われた。
iPS細胞は山中教授らによる発見以来、多くの研究者らによってその多能性獲得や多能性維持機能の研究が
行われているが、未だにその詳細なメカニズムは明らかになっていない。
研究チームは、iPS細胞機能解析に必須の基盤情報であるタンパク質の発現量情報の取得を目的とし、iPS細胞と
その誘導前に当たるヒト線維芽細胞中のプロテオームプロファイルとの発現比較を行い、iPS細胞の発現
プロテオームプロファイルを明らかにした。さらに、情報学的検討を加え、その特徴付けが行われた形だ。
具体的にはCiRAにて樹立されたヒトiPS細胞5株および対照試料としてヒト線維芽細胞3株を用意し、研究グループが
開発した独自のプロトコール「相間移動可溶化法」を用いてタンパク質を高収率で抽出。さらに消化酵素
トリプシンで処理して、ペプチド試料溶液を調製。nanoLC用カラムとして、内径0.1mm、長さ2mのガラス製
毛細管内部にシリカモノリスと呼ばれる多孔性連続構造体を重合反応により調製した。
このカラムをnanoLC-MS/MS装置に搭載したワンショットプロテオミクスシステム(画像1)を用い、ペプチド試料を
前分画なしで1試料あたり10時間かけ、ゆっくりとnanoLCからMS/MS装置に溶出させて直接計測を行ったのである。
そして得られたデータを情報学的手法により解析され、それぞれの試料溶液に含まれているタンパク質が同定・定量された。
画像1。ワンショットプロテオミクスシステム
URLリンク(news.mynavi.jp)
(本文>>2以降に続く)
▽記事引用元 マイナビニュース(2012/12/11)
URLリンク(news.mynavi.jp)
▽京都大学プレスリリース
URLリンク(www.kyoto-u.ac.jp)
▽Journal of Proteome Research
「Rapid and Deep Profiling of Human Induced Pluripotent Stem Cell Proteome by One-shot NanoLC?MS/MS Analysis
with Meter-scale Monolithic Silica Columns」
URLリンク(pubs.acs.org)