12/06/26 10:15:34.32
核融合炉での燃料生産に必要な材料の新しい製造技術を開発
-幅広いアプローチ活動のもと核融合炉に向けた燃料生産技術が大きく前進-
URLリンク(www.jaea.go.jp)
【発表のポイント】
・合成が困難であったベリリウム金属間化合物(ベリライド)を量産化できる新たな合成技術を確立し、目標形状
である直径1mmのベリライド微小球製造に世界で初めて成功。
・幅広いアプローチ(BA)活動の下進めていた研究開発において、初めて得られた研究成果であり、核融合原型
炉に向けた燃料生産技術の確立に大きく前進。
独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之。以下、「原子力機構」という。)核融合研究
開発部門ブランケット照射開発グループの中道勝グループリーダーらは、欧州と進める幅広いアプローチ(BA)活動1)
において、核融合炉の燃料を効率よく生産するために必要な材料として高温で安定なベリリウム金属間化合物2)
(以下、「ベリライド」という。)を量産化できる新たな合成技術を確立し、これを用いて核融合炉で使用可能なベリ
ライドの微小球を世界で初めて製造することに成功しました。この成果はBA活動のもと、将来の核融合原型炉に
向けた燃料生産技術の確立に大きく進展したことを示すものです。
核融合炉燃料のトリチウム3)は核融合反応で生じる中性子4)をリチウムにあてて生産します。このとき、より効率よく
燃料を生産するために中性子の数を増やす中性子増倍材5)が不可欠です。これまでの候補材であるベリリウム6)は、
高温域で化学的に不安定になる欠点があり、より安定なベリライドの製造技術開発を進めてきました。しかしベリリ
ウムは表面が酸化しやすいため、従来の粉末冶金法7)では脆くて加工が困難なベリライドしか得られませんでした。
そこで、原料粉末表面を放電で清浄にしたのち合成するプラズマ焼結法8)に着目し、BA活動の一環として青森県
六ヶ所村の国際核融合エネルギー研究センターの原型炉R&D棟で合成条件の最適化を図った結果、加工性に
優れた棒状のベリライドを製造することに成功しました。このベリライドを回転電極法9)の電極に用いて核融合炉で
使用する目標形状である直径1mmのベリライド微小球を世界で初めて製造することに成功し、大量製造技術を
確立しました。
この成果は、イーター10)での燃料生産試験をより確実にするとともに、核融合原型炉に向けた燃料生産技術の
確立に大きく貢献するものです。また、本合成法は、軽量耐熱耐摩耗材の機械部品のアルミニウム系合金の
合成(例えば車の高性能エンジン)など、広く一般産業分野への適用も期待できます。本成果については、特許
申請中であり、6月28日から神戸で開催される第9回核融合エネルギー連合講演会で発表予定です。
[研究の背景と目的]
核融合炉燃料のトリチウムは核融合反応で生じる中性子をリチウムにあてて生産します(図1上部参照)。このとき、
より効率よく燃料を生産するために中性子の数を増やす中性子増倍材が不可欠です。これまでの候補材であるベリ
リウム金属(Be)は、600℃以上の高温で体積膨張(スウェリング)や水蒸気との反応による水素生成が大きくなり、
高温域で不安定になる欠点があります(図1右下参照)。そこで注目したのがベリリウムの金属間化合物(ベリライド)
です。Be12Tiのベリライドを例にすると、スウェリングが3%以下(Beは約50%)、水素生成もBeの約1/1000と優れた
特性を持っていることから、高温域でより安定なベリライドの製造技術開発を進めてきました。
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図1 中性子増倍材の役割りと先進材開発の必要性
[研究内容と成果]
ベリライドの合成から微小球製造までのプロセスを図2に示します。材料の合成法としては、大きく焼結法と溶融法が
あります。焼結法の一つである粉末冶金法で試行した場合、均質な材料は合成できるのですが、Beのように酸化し
易い材料の場合、表面酸化層を巻き込んで焼結するために非常に脆く、成型及び加工が困難でした。さらに、本法
では均質な材料を得るために焼結-粉砕を繰り返し行うため、工程が複雑になり、不純物の混入を抑制することも
困難でした。次に、溶融法でも試行しましたが、組成が均一でなく、大型の原料を合成することが困難でした。
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図2 ベリライドの製造プロセス
>>2あたりに続く
独立行政法人日本原子力研究開発機構 平成24年6月22日
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