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米バイオテク企業の抗放射線薬開発、ガン患者に恩恵か
昨年の日本の原発事故と、2001年の米同時多発テロ事件は、災害やテロ攻撃の後に放射性物質拡散の
危険性が生じることを世界に知らしめた。いま小規模なバイオテクノロジー関連企業数社が世界初となり得る
抗放射線薬の開発を進めている。またこの医薬品はガンの治療など幅広く利用できる可能性が高い。
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香港で行われた災害演習 Agence France-Presse/Getty Images
高い放射線量は骨髄、消化器官、脳や他の臓器や組織に害を及ぼす。急性放射線症候群や放射線
関連の疾患のための治療薬として米国が認可した医薬品はないが、米テキサス州のバイオテクノロジー企業
テラピオ、ペンシルベニア州のバイオ医薬企業オンコノバ・セラピューティクス、カリフォルニア州のバイオテクノロジー
企業セレラント・セラピューティクスの3社が緊急時の抗放射線薬として、また他の疾患の治療薬としても常備
可能な医薬品の開発を急いでいる。
人体を蝕むものに対する細胞の反応に関する新たな研究が、からだの自然な防衛力を高める可能性がある
発見につながっている。テラピオは細胞の持つ毒素類の排出機能を高める方法を研究している。この機能に
関与するRLIP76と呼ばれるたんぱく質を多く投与することで、放射線や他の化学的毒素類にさらされた際の
細胞の生存の改善を期待している。同様に、オンコノバのEx-RADと呼ばれる医薬品は、分子機構を刺激
することで、遺伝子の修復機能を発動させ、細胞が死滅するのを防ぐ。両社によると、これらの医薬品は放射
線にさらされる前、もしくは放射線を浴びた直後に服用すると効果的だ。
放射線を浴びると、造血システムが損傷し、有害なバクテリアやカビなどに対する抵抗力が特に弱まることが
ある。セレラントのCLT-008は成人の造血幹細胞に由来する細胞治療薬で、感染症と闘い、止血にも必要な
成熟した血液細胞を作り出すように開発されたものだ。セレラントによると、動物を対象にした研究では、放射性
物質にさらされてから5日以内なら効果がある。
米生物医学先端研究開発局(BARDA)といった機関を介しての連邦政府の補助は、生物テロ対策用の
商品とあわせて医療分野での商品開発の一助となっている。セレラント幹部のロウエル・シアーズ氏によると、
同社はBARDAと1億6990万ドル(約136億2000万円)の契約をしており、これは好中球減少症の治療薬
としてのCLT-008の開発にも十分な資金だという。好中球は白血球の1種で、化学療法を受けると減少する
可能性があるものだ。同様に、オンコノバとテラピオも放射線治療の副作用を抑えることにも自社の製品が
効果を発揮する可能性があるとしている。
未上場の米製薬会社、ニューメディシンズはBARDAから多額の援助を得ている。同社は、ヒトのたんぱく質、
インターロイキン12に由来する製品HemaMaxについて、骨髄を再生させ、組織を守ることで、救命に効果が
ある可能性があるとみる。ただし、ガン患者が一番の恩恵を浴することを望んでいる。
ニューメディシンズの最高経営責任者(CEO)、レナ・バジーレ氏は、医師が化学療法の前後でHemaMaxを
患者に投与し、患者の骨髄と免疫システムの再生の支えとすることを期待している。動物を対象にした研究に
よると、ガン治療のために放射線を使用する際に、同製品は特に大きな効果を発揮する可能性が高いことが
示された。同医薬品が正常な細胞を保護し、ガン治療の目的である腫瘍細胞を死滅させる効果をより高める
という。同社は現在、HemaMaxの治験(臨床試験)に向け、企業パートナーを探している。
バジーレ氏は「病院にこの薬を置きたい。ガン患者には本当に役に立つと思う」と述べた。
Brian Gormley/Wall Street Journal 2012年 5月 2日 17:29 JST
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