12/05/04 14:12:22.27
「ヤモリの足」から生まれた最先端のテープ
生物や植物などの持つ構造や仕組み、形状などを工業製品に応用しようという生物模倣技術
(バイオミメティクス)の研究や製品展開が急速に盛り上がっている。日東電工はヤモリの足の裏に
ヒントを得た接着テープ「ヤモリテープ」を開発した。ナノテクノロジーの進化で、生物が持つ微細構造を
忠実にまねることができるようになったことが技術開発を後押ししており、利用範囲は一気に広がりそうだ。
URLリンク(www.nikkei.com)
カーボン・ナノチューブを並べた「ヤモリテープ」の電子顕微鏡写真
日東電工が開発したヤモリテープは、直径数ナノ~数十ナノメートルのカーボン・ナノチューブを
1平方センチメートル当たり100億本の密度でびっしり並べたもの。せん断方向の接着力に優れ、
わずか1平方センチメートル程度の面積のテープで500グラムを保持できる。これはヤモリの接着力の
8割強程度だが、実用的な接着テープとしては遜色ない。それでいて、めくれば簡単に剥離できる。
従来の粘着テープのように粘着剤が残ることはなく、テープ自体も繰り返し利用できる。
ヤモリの接着の仕組みが解明されたのは、2000年ごろのことという。電子顕微鏡でヤモリの指先を
観察したところ、足の裏に細かな毛が1平方メートル当たり10万~100万本の密度で密生しており、
さらに先端が100~1000本程度に分岐した構造を持つことが分かった。先端の分岐した毛の密度は、
同10億本以上。この細かな毛の1本1本が、対象物に極めて近い距離まで接近するため、原子や
分子間に働くファンデルワールス力によって接着する。
URLリンク(www.nikkei.com)
ヤモリの足の微細構造
「この構造が重要な要因だと分かった」(日東電工研究開発本部新機軸探索グループ主任研究
員の前野洋平氏)。日東電工は、当時の研究の最先端を走っていた米カリフォルニア大学バークレー
校に前野氏を派遣。同校で先端部の細い毛が密集した構造をポリイミド繊維で再現してみたところ、
繊維同士がファンデルワールス力で凝集してしまい、接着機能が発現しなかったという。ヤモリの足先の
毛が先端部だけが細かく分かれているのは、凝集を防ぐという意味があったのだ。
前野氏らは、先端だけを分岐させる代わりに、高剛性の材料を使うことで凝集を防げると考えた。
大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻教授の中山喜萬氏らと共同で、カーボン・ナノチューブを
毛のように並べたテープを開発した。カーボン・ナノチューブは直径が極めて小さく、非常に細長くできて
剛性は高い。微細加工を施した基板上で生成条件を制御すると、一方向にそろって成長する。これを
溶融状態のポリプロピレン基板に埋め込むことでテープ状とした。こうして、これまでとは全く異なる接着
機構のテープが生まれた。
カーボン・ナノチューブを使うことから、現時点では、高価で大量供給が難しいという難点もある。
このため、利用分野は当面、分析試料固定用テープに限っている。今後、量産技術を向上させ、
低コスト化を図って15年の一般販売を目指す。
壁や天井などを自由に歩き回るヤモリの足は、世界の接着関係の技術者が競って研究開発を進めて
きた対象だ。物質・材料研究機構(NIMS)環境・エネルギー材料部門ハイブリッド材料ユニットインター
コネクト・デザイングループリーダーの細田奈麻絵氏が調べたところでは、ヤモリの接着メカニズムの関連
論文は05年から07年にかけて急増した。
URLリンク(www.nikkei.com)
ヤモリの接着メカニズムに関する発表論文数(NIMSの細田氏の資料を基に「日経ものづくり」が作成)
基本原理が発見・解明されてから5~7年すると、それを工学的に応用する研究が大きく進む。これは
ヤモリに限らず、「ハスの葉の撥水(はっすい)効果」「モルフォ蝶の構造発色」といったテーマでも同様で
あるという。
>>2辺りに続く
日経ものづくり編集委員 木崎健太郎/日本経済新聞 2012/5/1 7:00
URLリンク(www.nikkei.com)