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(3)海底下熱水溜まりでの熱水化学組成の違いとチムニー鉱物組成が関係する
2010年9月に行われた地球深部探査船「ちきゅう」によるIODP第331次研究航海で創出した2つの人工熱水
孔(図2のC0016B、C0013E)では、形成されたチムニーの採取に成功し、成分の分析を行いました。
C0016B孔における人工熱水噴出孔チムニーは閃亜鉛鉱・ウルツ鉱・方鉛鉱・黄銅鉱を主成分としているのに
対して、C0013E孔のチムニーは、硬石膏を主成分として、黄銅鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱・ウルツ鉱も含有する
組成であることがわかりました(図3)。このような鉱物組成の相違からから、前者はほぼ成熟した黒鉱に相当する
チムニーであり、後者は黒鉱への成長前段階にあるチムニーと言えます。
URLリンク(www.jamstec.go.jp)
図3 採取した人工熱水噴出孔チムニー
掘削コア試料の解析においても、C0016B孔では海底下より黒鉱塊が得られているのに対し、C0013E孔では
脈状の硫化鉱物のみが存在するという違いが認められます。つまり、海底下熱水溜まりの中で大規模な黒鉱を
産出するポテンシャルに富んだ熱水が存在する部分から由来する人工熱水噴出孔では、海底面で著しく黒
鉱鉱物成分に富んだチムニーが容易に形成されるのに対し、海底下熱水溜まりの中で沸騰により蒸気相が
卓越した熱水が分離し濃集した部分から由来する人工熱水孔では、天然熱水噴出孔で形成されるものと
同じようなチムニーが形成されることが明らかになりました。
(4)持続的な鉱物資源回収の可能性
(2)、(3)の成果から、海底掘削により鉱床形成ポテンシャルが大きい海底下熱水を直接海底に噴出させる
人工熱水噴出孔を作り、回収装置を設置し、一定期間硫化金属鉱物を沈殿・成長させ、回収するという
アイデアを見出し、特許を出願しました。この成果は、開発リスクの高いと考えられてきた海底熱水鉱床開発に
おいて、「とる海底資源からそだてる海底資源へ」発想の転換を図る新しい海底資源開発手法となる可能性が
あります。
4.今後の展望
本研究は、人工熱水噴出孔という海底下の世界を覗き見る窓を通して、海底下の熱水溜まりの物理・化学
的性質に空間的・時間的な不均質性が存在しており、その熱水の不均質性が海底面でのチムニー形成を
支配していることを明らかにしました。これは、海底熱水における鉱物形成や鉱床成因論を解明する上できわ
めて重要です。
この研究成果は、黒鉱を形成するポテンシャルの高い海底下熱水溜まりを掘削し人工熱水噴出孔を創り出す
ことによって海底面での黒鉱養殖・回収を行うといった、極めて低いコストや環境負荷を実現可能とする、画期
的な鉱物資源回収の道を切り開く可能性があります。
【用語説明】
黒鉱:閃亜鉛鉱(ZnS)・方鉛鉱(PbS)・黄銅鉱(CuFeS2)などの硫化鉱物を豊富に含む、海底火山活動で
生成した黒色の混合鉱石。中央海嶺などの現在活動中の海底熱水活動域のチムニー等には、主に黄銅鉱
(CuFeS2)を主成分とする硫化鉱物が卓越しているのに対し、日本周辺の海底熱水活動域にはこの黒鉱
組成とよく似た硫化鉱物チムニーが産出することが多い。
黒鉱型鉱床は日本では東北地方、特に秋田県北部に多く分布しており、中新世の日本海の拡大に伴う
大規模な海底火山活動によって生成されたと考えられている。
黒鉱型鉱床の周辺では、黒鉱に伴って、黄鉄鉱(FeS2)・黄銅鉱を主成分とする「黄鉱」、重晶石(BaSO4)を
主成分とする「重 晶石鉱」、石膏(CaSO4・2H2O)・硬石膏(CaSO2)を主成分とする「石膏鉱」などが産出し、
これらの鉱石は熱水から析出した鉱物構成の違いを反映している。
閃亜鉛鉱=Sphalerite ((Zn,Fe)S)黄銅鉱=Chalcopyrite (CuFeS2)、方鉛鉱=Galena (PbS)、ウルツ鉱=
Wurtzite ((Zn,Fe)S)等が含まれることが判明した。(本文終わり)
日本が海底からのレアメタル採取に成功、中国も大きな注目
サーチナ 2012/03/26(月) 13:27
URLリンク(news.searchina.ne.jp)
>>3辺りに続く