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「人工熱水噴出孔を利用した有用鉱物資源の持続的回収」研究開発
海底熱水資源開発に向けた新たな基盤研究に着手
1.概要
独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)海底資源研究プロジェクトは、海洋・極限環境
生物圏領域およびシステム地球ラボプレカンブリアンエコシステムラボと共同し、2010年9月に行われた地球
深部探査船「ちきゅう」による統合国際深海掘削計画(IODP)第331次研究航海(沖縄熱水海底下生命
圏掘削シーズン1)で創出した伊平屋北熱水活動域における複数の人工熱水噴出孔について、熱水噴出
パターンの変動、熱水化学組成の調査・観測を1年以上にわたり継続し、それらについて明らかにするとともに、
海底熱水を持続可能な資源として活用する基盤技術の研究開発を図るため、人工熱水噴出孔に新たに
形成されたチムニーの形成様式、組成分析を行いました。
その結果、黒鉱層を形成する海底下の熱水溜まりから直接噴出させた人工熱水噴出孔においては、著しく
黒鉱鉱物成分に富んだチムニーが容易に形成され、短期間で大規模に成長することを発見しました。この
結果は、これまでの海底熱水域における有用鉱物資源回収法とは全く異なり、持続的な回収法の可能
性を示唆するものです。
本成果は、機構から特許申請しており、今後、海底熱水域における有用鉱物資源を利活用するための
基盤構築に大きく寄与することが期待されます。
2.背景
日本は狭い国土ながら、世界第6位の広大な排他的経済水域(EEZ)を持っています。この広大なEEZ内に
眠る海底資源を生かすことは、日本の更なる経済成長を支えるのみならず、人類の持続可能な発展のために
非常に重要です。
熱水噴出域には、銅や亜鉛、鉛、金、銀などを含む硫化物が沈積してできた煙突状の「チムニー」が形成
されており、その硫化物沈殿物の規模が大きくかつ含有される有用金属の品位が高いものは熱水鉱床と
呼ばれ、重要な海底資源の一つとして注目されています。しかしながら、深海底に形成されることから容易
には採掘・回収できない等の問題があり、そのための技術開発が期待されています。
研究チームでは、2010年9月に行われた地球深部探査船「ちきゅう」によるIODP第331次研究航海において、
沖縄本島の北西150kmの中部沖縄トラフの水深1000mに存在する深海底熱水活動域(伊平屋北フィールド)
(図1)に作った人工熱水噴出孔4地点(図2)について、熱水噴出パターンの変動、熱水化学組成について
継続的に観測を行い、人工熱水噴出孔に新たに形成されたチムニーの形成様式、組成分析を行ってきました。
URLリンク(www.jamstec.go.jp)
図1 IODP第331次研究航海の調査海域図(伊平屋北フィールド)
URLリンク(www.jamstec.go.jp)
図2 IODP第331次研究航海で設置した人工熱水噴出孔(4地点)の位置関係
伊平屋北フィールドの海底下では、キャップロックが複数存在し、熱水が熱水滞留帯は広大かつ深くまで
達しており、熱水は上部の方に蒸気を多く含む軽いものが分布し、下部には塩分を多く含む重い熱水が
存在していることが明らかになっている(2010年10月3日既報)。
3.結果
(1)時間経過に伴う熱水組成の変化
4箇所の人工熱水噴出孔は、掘削直後(2010年9月)、数日の間黒味を帯びた熱水を噴出しており、比較
的早い時期に黒味がないクリアスモーカーになりました(2011年2月、掘削から約4ヶ月後)。また、2011年2月に
人工熱水孔から噴出する熱水を採取してその化学組成を調べたところ、掘削前の自然熱水孔の熱水に比べて、
蒸気(気相)分に乏しい熱水に変化していることを明らかにしました。
(2)人工熱水孔におけるチムニーは短期間で急速に成長する
伊平屋北熱水活動域の活動中心であるNorth Big Chimneyと呼ばれる高さ20mを超える熱水マウンドの
頂部に創出された人口熱水噴出孔(図2のC0016B)に、2011年2月には6mを超えるチムニーが新たに形成
されていることを見出しました。この航海において採取を試みましたが、採取できず、チムニーは崩壊してしまい
ましたが、半年後の2011年8月から9月にかけて行われた航海では、この崩壊したチムニーが8mを超えるほどに
再成長していることを確認しました。このことは、人工熱水孔におけるチムニーは短期間で急速に成長することを
示しています。
独立行政法人海洋研究開発機構プレスリリース 2012年 3月 23日
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