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東大など、数十年来の脳の謎を解明 - 脳回路が精密な配線であることを発見
科学技術振興機構(JST)と東京大学は1月20日、脳の神経回路が、回路を形成する神経細胞
「ニューロン」(画像1)より小さく、「シナプス」の単位で正確に編まれることで機能を発揮することを
明らかにしたと発表した。東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二准教授らの研究グループに
よる発見で、成果は米科学誌「Science」に米国東部時間1月20日に掲載された。
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画像1。ニューロンとシナプスの基本構造。ニューロンは、樹状突起が広がる細胞体部分と、そこから
長く伸びる軸索とで構成され、ほかのニューロンから受け取った情報を処理して、ほかのニューロンに
伝えていく。シナプス部分では、神経伝達物質を使って情報をほかのニューロンに伝える
脳はニューロンと呼ばれる神経細胞からなり、各々のニューロンが、少しずつ情報を処理している。その
処理結果は、ニューロン間の特殊な結合であるシナプスを介して、次のニューロンに伝えられる(画像1)。
ニューロンには多くの樹状突起と呼ばれる枝分かれした線維があり、ここにあるシナプスは、樹状突起の
先端部分「スパイン」と呼ばれる突出構造を介してほかのニューロンからの情報を受け取る仕組みだ。
樹状突起は複雑に分岐するだけでなく、種々の「イオンチャネル」(細胞膜や内膜など、細胞の生体膜に
ある膜貫通タンパク質の一種で、受動的にイオンを透過させるタンパク質の総称)や「受容体」(生物の
体にあって、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報として利用できるように変換する仕組み
を持った構造のこと)を持つため、「どのスパインが、いつ、どんな入力を受けたのか」が、ニューロンの情報
処理に大きく影響する。
ニューロンは主として樹状突起からの入力を受けるが、樹状突起上のシナプス配置のパターンについては、
現在、2つの仮説が提唱されている(画像2)。1つは、同期した入力(ほぼ同時刻に来る入力)は樹状
突起上のある特定の箇所に集中するという「クラスター入力モデル」(仮説1)で、もう1つは、同期した
入力が樹状突起全体に散在している「分散入力モデル」(仮説2)だ。
仮説1はニューロンの一部を強く活動させるためには有利とされているが、仮説2は情報のロスが少ないと
いう利点がある。いずれのモデルが正しいのかについては、数十年来の議論の的となっているものの、こ
れを検証するための実験技術がなかったため、これまでに明確な回答は得られていなかったというわけだ。
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画像2。今回の研究は、2つの仮説のうち仮説1が正しいことを証明した。左図では、同期するニュー
ロン仲間が、相手ニューロンの線維の近くに集中的に投射している。右図では、そのような秩序は見ら
れない。このどちらの図が正しいかが、長らく議論の的になっていた
活動している神経細胞を観測するために現在広く利用されている手法は、「カルシウムイメージング法」
と呼ばれるものだ。活動している神経細胞を検出するため、活動時に細胞内で遊離されるカルシウム
イオンの存在により蛍光を発する色素(カルシウム蛍光指示薬)を用いる仕組みである。
しかし、この蛍光は微弱なため、従来の手法では強いレーザー光を当てることによって観察中に細胞が
死んでしまうのを回避することができないという欠点があった。そこで今回、池谷准教授らは、抗酸化
剤を用いることで死滅する細胞を減らし、また光透過性の高い光学レンズと高感度なデジタルカメラを
用いるなど、多くの改良を行い、「大規模スパインイメージング法」を開発。その結果、多数のシナプス
から一斉にカルシウム活動を計測することができるようになったという次第だ。
この手法をもとに、まずステップ1として海馬のスライス培養標本のニューロン内にカルシウム蛍光指示
薬を注入し(画像3)、多くのスパインからの蛍光変化を高感度CCDカメラにより同時に記録することで、
「どのスパインが、いつ、どんな入力を受けたのか」を調べた。
デイビー日高/マイナビニュース 2012/01/20
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