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バクテリアを養殖する“雪男ガニ”
Charles Q. Choi
for National Geographic News
December 5, 2011
“イエティクラブ(雪男ガニ)”の通称で知られるヤドカリの一種は、毛に覆われた腕でバクテリアを育て、
主な食糧源にしているという。
毛の生えた長い腕が“雪男”を連想させるこの甲殻類は、2005年に発見されたばかりだ。最初の種キワ・
ヒルスタ(Kiwa hirsuta)が見つかったのは、イースター島から南に1500キロの南太平洋沖、深度2300
メートル付近の熱水噴出孔。体は白く、目は退化していた。
2006年には、コスタリカ沖、深度1000メートル付近の水温の低いメタン噴出孔に住む、同属のキワ・
プラウィダ(Kiwa puravida)が仲間入りした。
キワ・プラウィダは、不思議なことに噴出孔のすぐ近くで“ハサミ”をゆっくりとリズミカルに動かして
いたという。
「なぜ腕を振っているのか。はじめて見たときは困惑した」と、研究の共同責任者を務めるアメリカ、
オレゴン州立大学の生物海洋学者アンドリュー・サーバー(Andrew Thurber)氏は言う。
◆“ハサミ”を動かす理由とは
他の生物と一定の距離を保つための動作かもしれない。当初はそのような推測もされたが、細胞
組織と毛の生えた腕に付着しているバクテリアを化学的に分析したところ、キワ・プラウィダはこの
バクテリアを主食としていると判明した。
また、海底で撮影した動画から、口の部分に突き出ている毛で覆われた器官で、腕のバクテリアを
こすり落として食べていることもわかった。
現在では、ハサミを噴出孔の近くでゆっくりと動かす理由は、海水を撹拌して腕のバクテリアに
新鮮な養分を送るためだと考えられている。
もし毛で覆われた器官に水の流れを感知する働きがあれば、この器官を使って体に付着している
バクテリアの栄養源を見つけている可能性がある。
◆深海の可能性
これまでにも、深海でバクテリアと共生しているエビなどが見つかっている。「だがバクテリアを
“育てている”確証が得られた生物は、今回が初めてだ」とサーバー氏は語る。
「深海の生態系には、未解明の謎が多く残されていることがわかった。深海に探索範囲を広げれば、
保護すべき多くの新種に出会えるだろう」。
例えば、他にも食用の生物を育てている種があるかもしれない。熱水噴出孔とメタン噴出孔の
バクテリアに種としての共通点があれば、世界中の噴出孔で付近の生物の食糧源となっている可能性
もある。研究の詳細は「PLoS One」誌に11月30日付けで掲載されている。
▽記事引用元 ナショナルジオグラフィック ニュース
URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)
▽画像 ヤドカリの一種「キワ・プラウィダ(Kiwa puravida)」
“イエティクラブ(雪男ガニ)”とも呼ばれ、長い腕でバクテリアを育てて食べる
URLリンク(www.nationalgeographic.co.jp)
▽PLoS One掲載の論文要旨
Dancing for Food in the Deep Sea: Bacterial Farming by a New Species of Yeti Crab
URLリンク(www.plosone.org)