12/11/19 00:45:00.54
◆表現者萎縮の可能性を危惧
◇講談社取締役 渡瀬昌彦さん
―性描写のあるマンガの販売規制を含む改正都青少年健全育成条例が、昨年7月に施行されました。影響は。
今のところ新規制にかかった作品はなく、その意味では直接的な影響はまだありません。
ただ、表現者が萎縮して、何らかの抑制が働いている可能性はあると危惧しています。
今後規制が適用された場合、業界として声を上げていかないといけない。
新しい知事には、ぜひ考え方をうかがい、条例見直しを求めたい。
◆規制対象が抽象的
―当初の改正案は「非実在青少年」という新語で批判を浴び、都は規制対象を修正して成立させました。
「非実在青少年」という訳の分からない言葉に、マンガ家ら表現者も、マンガファンも強く反発した。
修正案では「非実在青少年」は外れたが、それでも規制対象は抽象的。
網をかけようと思えば、きわめて広くかけられる危うさがある。
当時、日本雑誌協会の人権・言論特別委員長として、修正案を議論する都議会も傍聴しましたが、中身のある議論はなかった。
恣意(し・い)的な運用を防ごうと都議らに働きかけ、「芸術性、社会性、学術性、諧謔(かい・ぎゃく)的批判性等の趣旨をくみ取り、慎重に運用する」という付帯決議につながり、一定の歯止めにはなったと思います。
―規制について出版業界はどう考えていますか。
(新規制の対象となる)性描写はこれまでも小説などで扱われてきた。
それがストーリー上の必要性があるかどうか。
決めるのは読者であり、表現者が考えていくことです。
「販売規制であり、表現の規制ではない」といいますが、書店の18歳未満禁止コーナーは、やはり一部の人向け。
一般読者向けの妥当な表現にもかかわらず、そこに押し込められてしまうことで、手にとってもらう機会が減り、表現の規制に直結します。
◇旧条例で十分対応
―1970年ごろの「ハレンチ学園騒動」の時から、親には規制強化を求める声も根強い。
自主規制で実効性がありますか。
そういう声は常にあり、自戒しなければなりません。
ただ雑誌協会でも議論をし、成人向け雑誌は(立ち読みできないよう)包装するなど、自主規制に取り組んできました。
過激と指摘される作品も、旧条例で十分対応できました。
他県では(性表現のページ数などに応じて一律に有害図書とする)「包括指定方式」を導入しているのに対し、東京は実際の作品を個別に議論して決めており、一定の評価ができました。新規制は非常に残念です。
―知事時代の石原慎太郎氏は放言もありましたが、言葉の感覚をどう受け止めますか。
言葉には色々な表現があっていい。粗暴だから、べらんめえ口調だからダメということはない。
ただ、(規制対象として都が想定するような)作品の作者に「卑しい仕事をしている」と言うなど、クリエイターへの敬意が欠けた発言は残念です。
条例に、あれだけの反発を招いた要因の一つだろうと思います。
(聞き手・三島豊弘)
わたせ・まさひこ 1956年、埼玉県生まれ。
79年に講談社に入社。
雑誌編集などにたずさわり、「月刊現代」編集長などを経て、現在は同社取締役(学芸局担当)。
2007年から今年5月まで、日本雑誌協会の人権・言論特別委員長をつとめた。
※以下から抜粋
URLリンク(mytown.asahi.com)