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その中でも特に目立つのは女性の進出である。これは1990年代中盤以降に巻き起こった
アニメブームで、2000年代以降にアニメの存在が社会的に認知されるようになったことが
大きいと思われる。某大手スタジオがアニメーターを募集したところ応募者の8割近くが女性で、
実際に採用したのもほとんどが女性だったという。また、多くのスタジオで一般職や制作などの
新卒募集に女性が応募してくるケースも増えているという。
監督になるためのスタートラインは主に2つある。1つは制作進行から、もう1つはアニメーターからである。
制作進行からスタートした場合は、設定制作や絵コンテ、時には脚本が認められ、その後
演出、助監督などを経て監督となる。アニメーターの場合は絵コンテや作画監督などを通じて
その演出手腕が評価されてのことが多い。
これら監督志望者は早ければ入社2~3年(専門学校卒なら22~23歳、大卒なら24~25歳)で
設定や絵コンテを任せられるようになり、それが認められれば次にシリーズの各話演出や
助監督を担当することになる。そして、タイミングに恵まれれば、30歳前に監督デビューを飾る
といったパターンが多い。
では、なぜこのように若手監督が輩出されるのか。それはアニメ業界では人材育成の拠点となる
スタジオが機能しているからだろう。これは映画業界全体と比較すると明白だ。
次図を見ても分かる通り、1958年に11億2745万人と観客動員数のピークを迎えた映画業界だが、
その後1960年代に入り急激に観客動員を落としていく。そのような経緯の中で映画会社は
急速に制作数を縮小、演出、撮影、美術といった制作人員の採用は一気に縮小し、1970年代に
入るとほとんど打ち切りの状況となった。
そして、スタジオが演出人材を育てなくなった映画業界で、監督へのキャリアパスはフリーの
助監督、自主映画のどちらかに絞られるようになった。まれにCF(コマーシャルフィルム)制作会社を
経由する監督もいるが、今、映画監督になろうと思えば、とりあえずつてを頼って現場に入り
フリーの助監督になるか、自分で資金を集めて映画を撮る道しかないのである。
今の映画業界には、アニメ業界のように「恒常的に雇用が確保され、かつ制作費が保証された
状況で作品を作れるといった監督へのキャリアアップシステム」は存在しない。人材育成には
必要不可欠なスタジオであるが、アニメ業界においてはしっかりそれが機能している
ということなのである。