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【産経抄】わかめの日 5月5日
きょうは、「わかめの日」である。早春から全国で始まった収穫が一段落し、
新物が店頭に行き渡るのが今頃だ。旬のタケノコとも相性がいい。子供の成長に
欠かせない栄養素も豊富なことから、消費拡大を願って「こどもの日」にあわせて
設定されたという。
▼縄文時代の遺跡から発見され、万葉集にも詠まれている。古来、日本人に
親しまれてきた。東日本大震災で壊滅的打撃を受けた三陸産のワカメも、漁獲量、
品質ともに安定し、風評被害と闘っている。
▼韓国の人たちは、そんな日本人以上にワカメを食べている。牛骨からスープを
取ったワカメスープは、誕生日の定番料理だ。出産祝いに、ワカメを贈る
習慣もある。スープを毎食飲むと、体内の血が浄化され、お乳の出もよくなり、
赤ちゃんもすくすく育つというわけだ。
▼韓国の人気脚本家、コ・ヘジョンさんのエッセー『お母さんのワカメスープ』
(新潮社)に、こんな場面がある。第1子を生んだ彼女に姑(しゅうとめ)から、
ワカメ1束と約1・2キロの牛肉が届いた。産後の世話をしていた母親は、
少なすぎる、と怒って泣いた。早速実家から牛1頭分もあるほどの骨と肉、
ワカメを持ってこさせて留飲を下げたという。ワカメスープは、母と子の絆の
象徴なのだ。
▼韓国南西部の珍島(チンド)は、ワカメの名産地として知られる。その沖合で
先月16日に沈没した旅客船の遺体捜索が、現在も続いている。事故をめぐっては、
乗客を見捨てて脱出した船長をはじめとして、耳を疑うようなニュースが相次いだ。
▼なにより携帯電話に家族に向けたメッセージを残して、冷たい海に沈んだ
高校生があわれでならない。「愛してる」。母親は、温かいワカメスープを
用意して待っていたはずだ。