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朝日新聞2013年5月14日朝刊「声」欄より
犠牲払って得た憲法、尊重望む
作家 森村誠一(東京都町田市 80)
憲法9条が風前の灯火(ともしび)である。
まず、96条を改め、憲法を改定しやすくした上で、本命である9条を改造、
あるいは廃棄しようという作戦である。
軍国主義の下、戦前戦中、基本的人権の悉(ことごと)くを奪われ、
失った人間的自由を、戦後、公布・施行された日本国憲法によって取り戻した。
特に戦争を放棄した9条は、世界に誇るべき革新である。
いかなる民主主義国家でも、戦争が始まれば基本的人権の制限を受ける。
改憲の論拠は他国から侵略されて交戦権を持たぬ国がどこにあろうかという点であるが、
今日、戦争の構造は異なっている。
戦争の原因である一国の意志を他国に強制することは、世界の反感を集めて不可能である。
思想の自由を認める民主主義は、その反対の思想を許す。
だが、その排他的な反対の思想は思想の自由を許さない。
民主主義はもろい政治形態であり、その反対思想に対して常に警戒し、
慎重に対処して過ぎるということはない。人類の天敵・戦争は必ず民主主義を圧迫し、基本的人権を奪う。
人類初の核兵器の洗礼を受け、300万の犠牲を払って得た人権保障憲法を、
一代の政治家が安易にいじくるべきではない。