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産経抄 12月17日
1体の男性の人骨は、榛名山に向かってうつぶせに倒れていた。6世紀
初めの噴火で火山灰に埋まった、群馬県渋川市の金井東裏(かないひ
がしうら)遺跡から出土したものだ。身につけていた「甲(よろい)」から、
首長クラスの武人の可能性がある、との報道が先週あった。
▼近くで頭の骨が見つかった乳児ら家族を連れて、逃げる途中だったの
か。それとも自らが犠牲となって、「山の神」の怒りを鎮めようとしていた
のか。
▼後者の説を採るなら、福島第1原発事故の現場で収束に当たった吉
田昌郎(まさお)所長ら所員たちと自衛隊、消防隊員を連想してしまう。
被曝(ひばく)の恐怖を乗り越え、使命を果たした男たちである。
▼きのう投開票が行われた衆院選は、予想通りの結果だった。東日本
大震災と原発事故、経済の低迷、尖閣諸島と竹島問題、内外の課題に
直面した民主党政権はことごとく期待を裏切り続けた。何故か。3人の
首相が、吉田さんや古墳時代の武人のようなリーダーシップを発揮でき
なかったからだ。
▼菅直人前首相の選挙区での敗北が、すべてを物語る。原発事故当時、
吉田さんたちの足を引っ張った不手際が明らかになっている。その反省
を語ることなく「原発ゼロ」をいくら主張しても、有権者は底の浅さを見透
かしていた。
▼「民主党の大勝利というより、自民党の大敗北だった」。前回の衆院選
について小欄はこう書いた。今回は、政党の名前を入れ替えるだけでい
い。大量議席を獲得した自民党の安倍晋三総裁の認識も同じだろう。前
回の首相時代の轍(てつ)を踏むことなく、火砕流のように押し寄せる難
題に、正面から立ち向かってほしい。今度こそ我々の判断は間違ってな
かった、と多くの有権者が胸をなでおろせるように。