12/05/03 05:44:00.03 3IdIcp0GP
産経抄 5月3日
五輪代表を争う最重量級の選手が総崩れして、90キロ級の選手が優
勝をさらう。先日の全日本選手権での体たらくからすれば、夢のような
話だ。かつて五輪で金メダルを取るより、柔道の全日本選手権で優勝
する方が難しいといわれた時代があった。
▼なかでも世界的に注目されたのが、昭和60年の山下泰裕選手と斉
藤仁選手の決勝戦だ。世界チャンピオン同士の対決を制した山下選手
は、その1カ月半後に引退を表明する。くやしさをバネにした斉藤選手
は、次のソウル五輪で山下選手がなしえなかった連覇を果たした。
▼急死した男子100メートル平泳ぎの世界王者、ノルウェーのアレクサ
ンドル・ダーレオーエン選手(26)にとって北島康介選手は、柔道にお
ける山下選手のような存在ではなかったか。北島選手に敗れて銀メダ
ルに終わった北京五輪の翌年に来日、トレーニング法を貪欲に学んで
いたという。
▼五輪後1年のブランクをへて競技に復帰した北島選手は、昨年の世
界選手権では4位に終わった。「強いよ。勝てないよ」。圧勝したダーレ
オーエン選手をたたえながら、ひそかに闘志をかき立てていたようだ。
▼先月の日本選手権では、日本記録で五輪への切符を得て、「王者
復活」をアピールする。3大会連続2冠の偉業のかかったロンドンで、
世界が待ち望んでいた名勝負はもう見られない。
▼英語の「ライバル」は、「リバー(川)」と同じ語源を持つとの説がある。
もともとの意味は「同じ川を利用する仲間」だ。「涙がとまらないよ」。米
国で練習中の北島選手は、自身のツイッターでつぶやいた。水泳選手
として極限の世界を共有した、唯一無二の友に贈るのにふさわしい、
惜別の言葉だった。