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産経抄 5月2日
津本陽氏の『椿と花水木(はなみずき)』はジョン万次郎の数奇な運命を
描いている。遭難後、捕鯨船に救われ米国に渡った万次郎が初めて見
た花がハナミズキ(ドッグウッド)だった。米国人女性との間に男の子が
生まれたらドッグウッド、女の子ならカミーリア(椿)にしようと約束する。
▼小説の題の由来だが、それほどにハナミズキは米国を代表する花の
ひとつである。日本がワシントンに寄贈した桜の返礼として大正4(191
5)年、東京に苗木が贈られてきた。以来、日本でも春から初夏の街に
欠かせない花として定着した。
▼このハナミズキが再び「日米友好」の象徴の役割を担うことになった。
30日の日米首脳会談後に発表された共同声明の付属文書に、大震災
の被災地などに3千本を贈られることが盛り込まれた。被災地だけでな
く日本にとって新たな「トモダチ作戦」はうれしい。
▼だが、現実の日米関係のシコリは、そう簡単にほぐれそうもない。沖
縄・普天間飛行場移設問題を弄んだ鳩山由紀夫元首相ら民主党政権
の「外交ごっこ」で深い亀裂が生まれたのだ。今回の共同声明も日米同
盟を「安定の礎」とうたってはいるが、どこかよそよそしい。
▼1世紀近く前にハナミズキがプレゼントされた後、皮肉にも日米関係
は悪化の道をたどっている。大陸での利権の対立に始まり、米国の圧
力で日英同盟が廃棄される。1924年には排日移民法が制定され、後
はもう修復しようもないほどになる。
▼そんな歴史を知ってか、今回の「ハナミズキ特使」は、日本に対し覚
悟のほどを迫っているように見える。中国による脅威や北朝鮮の暴走
を前に、日米同盟を揺るぎないものにたて直していく。その覚悟である。