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産経抄 4月24日
「名も知らぬ 遠き島より 流れ寄る 椰子の実一つ」。もともと愛知県の
伊良湖(いらご)崎の浜辺で、ヤシの実を見つけたのは、大学生時代の
柳田国男だった。友人の島崎藤村がその話を聞いて作ったのが、「椰子
の実」の歌だ。
▼その歌を地でいくようなヤシの実が昭和50年、島根県出雲市の港で
見つかった。墨で書かれた文字から、昭和20年7月にマニラ近郊で戦死
した出雲出身の陸軍軍属が、その1年前に海に流したものとわかった。
▼31年かかって、大海原を漂流して故郷にたどり着いた「奇跡の椰子の
実」として、大きな反響を呼んだ。その後、未亡人によって靖国神社に奉
納され、現在は「遊就館」に展示されている。
▼米アラスカ州の海岸で3月中旬、デービッド・バクスターさんが見つけ
たサッカーボールにも、「奇跡の」という枕詞(まくらことば)がふさわしい。
東日本大震災の津波によって太平洋に押し出されてから、5千キロ以上
の旅を続けてきた。日本人の妻、ゆみさんは、ボールに書かれた日本語
から、すぐに被災者の持ち物だと気づいたという。ただ無事かどうかが、
心配だった。
▼持ち主が、岩手県陸前高田市の高校2年生、村上岬さんと判明するま
でには、小紙もいささか貢献している。村上さんの名前をインターネットで
検索すると、昨年4月に、「MSN産経ニュース」の「被災地からのメッセー
ジ」に登場していたことがわかったからだ。
▼目の前で自宅が波にのみ込まれた村上さんにとって、思いがけず戻っ
てくることになった思い出のボールは、何よりの励みになるだろう。やはり
バクスターさんが見つけたバレーボールの持ち主、「詩織」さんも見つかっ
た。こんな「奇跡」は続いてほしい。