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産経抄 4月22日
今年も何回か花見する機会があったが、昨日、東京発行の本紙1面で
見た桜の写真は見事だった。福島県大熊町、つまり福島第1原発があ
る町の中の巨木である。震災で壊れた民家と防護服姿の町の人の上
で、ほぼ満開に咲き誇っている。
▼その前々日の他紙夕刊には隣の富岡町の桜並木の写真が掲載さ
れていた。どちらも避難を余儀なくされている町民が見れば、胸がふさ
がる思いだろう。一方で原発事故以来、放射能汚染に心を痛めつづけ
てきた日本人を、どこかホッとさせている気もしてならない。
▼事故直後、原発周辺がまるで「死の町」になるかのような無責任な
ことを言う「識者」もいた。だが例年通り満開の桜を見る限り、放射能の
「影」は感じられない。本紙によれば、大熊町では野生化した牛の群れ
が人の姿に驚いて駆け回っていたという。
▼だから人間も心配ないなどと言うつもりはない。しかし人への放射能
の影響はさまざまに意見が分かれる。池田信夫氏の『原発「危険神話」
の崩壊』は、チェルノブイリ事故を例に、事故の被害よりも「放射線の恐
怖によるストレス」の方が大きな影響を与えるという見方をする。
▼将来の健康被害を考えて、行政などが厳しい基準を定め警戒させる
のは仕方ないだろう。だがそれが過剰な恐怖を招き風評被害を発生さ
せる。過度なアレルギー感情から被災地のガレキの受け入れを拒否し、
復興の足かせとなっているのも事実である。
▼原発事故周辺で開花した桜や、駆け回る牛たちの姿は決して「奇跡」
なんかではない。ごく自然に命の営みを続けているだけだ。むしろ人間
に対し呼びかけているみたいだ。「そろそろ冷静に考えてみてはいかが
ですか」と。