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産経抄 4月20日
日曜日の小紙生活面で、奥薗壽子(おくぞの・としこ)さんが紹介する季
節感あふれた献立を毎回楽しみにしている。売れっ子料理研究家の出
発点は、「乾物」だった。30代半ばで本格的に仕事を始めたものの、2
人の子供を1人で育てる奥薗さんは、材料費にも事欠いていた。
▼そこで目をつけたのが、乾物だ。切り干し大根や高野豆腐、干しシイ
タケは、量が増えてしかも腐らない。「売れない」としぶる出版社を説得
して出した乾物のレシピ集が大ヒットする。水で戻すなどの手間をはぶ
き、洋風にも使う料理法が斬新だったからだ。
▼「死者9700人」。きのうの各紙の1面見出しに、一瞬ぎょっとした読
者も少なくないだろう。東京湾北部を震源とするマグニチュード7・3の
首都直下型地震が発生した場合、どんな被害が出るのか。東京都が、
新たに被害想定を公表した。全壊・焼失する都内の建物は、30万棟
にも達する。
▼東日本大震災の発生以来、丸い缶に入った懐かしい「ビスコ」の売
れ行きが好調だという。乾物も同じ保存食として、再び脚光を浴びて
いるのではないか。食料や水の確保だけでは不十分だ。重い家具は
固定し、家族との連絡方法を確認する。自分の身は自分で守る心構
えがいかに大切か、あらためて思い知らされる。
▼ただ、やみくもに地震を恐れて東京が元気を失うのは、本末転倒だ。
いざというときに助け合えるよう、近所の人に声を掛ける機会が増え
れば、地域社会がぬくもりを取り戻す効果も期待できる。
▼奥薗さんの提唱する「ズボラ家庭料理」のモットーは、ちょっとした工
夫で、料理をよりおいしく、楽しく、だ。明日起こるかもしれない大地震
への備えにも、そんなアイデアが欲しい。