12/03/11 06:13:06.29 VPnXZeSsP
産経抄 3月11日
地球の自転速度は少しずつ遅くなっているそうだ。今は5万年に1秒程
度である。10億年後には、1日が26時間ほどになる計算もあるのだと
いう。物理学者、二間瀬敏史氏の『どうして時間は「流れる」のか』によ
れば、それは「潮の満ち引き」のためと考えられている。
▼満ち引きで起きる海水の運動と固体としての地球の運動に摩擦が
生じ、自転にブレーキがかかるのだ。恐るべき「海水の力」である。ちょ
うど1年前の今日、日本人いや世界中の人がその魔力をまざまざと見
せつけられた。あの大津波である。
▼1年後の今も、被災地を訪れる人は、その大きさを示す痕跡に息を
のむ。宮城県気仙沼市の陸地に打ち上げられた大型漁船であり、石
巻市の市中に転がる水産加工会社の巨大なタンクである。南三陸町
の3階建て警察官舎の屋上には車が取り残されたままだ。
▼当時のままの姿をさらしているのは、撤去に時間がかかるせいでも
ある。だが大津波の教訓を後世に伝えるため保存すべきだ、との意見
があるのも理由のひとつだ。気仙沼の大型船の前では県外からきた人
々がカメラに収めたり、手を合わせたりしているという。
▼一方で「見れば恐怖がよみがえるだけだ」と、早期撤去を求める地
元の声もある。石巻のタンクは会社が自費で工場に戻すそうだ。その
気持ちは痛いほどわかる。だが「天災は忘れたころにやってくる」とい
うのも、何度も味わわされた冷徹な事実だ。
▼やがて育ってくる津波を知らない世代のために、いくつかは残してほ
しい気がする。平成7年の阪神淡路大震災では、淡路島に巨大地震ゆ
えの大きな地割れが生じた。今はその上を建物で覆って保存し、備え
を訴え続けている。