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産経抄 3月9日
「粛々」という言葉は、もともと中国現存最古の詩集『詩経』では、「おご
そか」の強調表現と、鳥の羽ばたきを表す擬音語だったそうだ。日本に
渡り、頼山陽の「鞭声(べんせい)粛々」を経て、現在の政治家は主に、
「普段と変わらず」の意味で使っている。
▼その変化の道筋は、円満字二郎さんの『政治家はなぜ「粛々」を好む
のか』(新潮選書)にくわしい。平成22年に沖縄・尖閣諸島沖で起きた
漁船衝突事件で、むざむざ中国人船長を釈放するまで、民主党政権の
幹部が盛んに口にしたのも、この言葉だった。
▼ただ今にして思えば、「強国の傲慢には、波風を立てないのが得策」
のニュアンスの方がむしろ強かった。日本の排他的経済水域(EEZ)の
権益をめぐる政府の施策を見ていると、2年前と何も変わっていない。
▼尖閣周辺を含む39の無人島の名称を決めたのはいい。ただ、記者
会見で内外メディアに発信する機会を逃してしまった。まして小紙がス
クープするまで、23の離島の国有財産化を公表しなかったのは、いか
なる了見か。尖閣周辺の4島を対象からはずしたのも、中国への配慮
との見方がある。
▼案の定、中国は範囲を広げて71の島に命名する対抗措置に出てき
た。日本が粛々と弱腰外交を続けている間に、海軍力を増強して、東
シナ海支配を着々と進めるのが中国の狙いだ。その野望を阻むため
に日本は、尖閣諸島に自衛隊を常駐させて実効統治を強化した上で、
堂々と「正論」を訴えるしかない。
▼円満字さんによれば、ナポレオンも愛読した『孫子』で「堂々」は、軍
隊の陣立てにゆるぎがないようすを表している。そんな相手に、攻撃を
仕掛けるのはやめた方がよい、と説いているのだ。