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【産経抄】3月7日
少々おてんばな女性を「じゃじゃ馬」と、呼ぶことがある。
シェークスピア作の戯曲『じゃじゃ馬馴らし』は、そんな
気の強い富豪の娘をめぐる喜劇だ。世の男どもが「じゃじゃ馬」
ゆえに敬遠する中、一人だけが挑戦し彼女以上の気性の激しさで、
その心と富をゲットする。
▼むろん本来は御しにくい馬のことを言う。これに女性を
例えるなど「男性中心的」との批判もあるかもしれない。
しかし古来人間が馬を遣い慣らすのにどんなに苦労したかが、
この「じゃじゃ馬」という言葉に込められている気がする。
▼70歳でロンドン五輪の馬場馬術代表に決まった法華津寛さんの
愛馬は15歳の牝馬、ウィスパーである。彼女のことを
「じゃじゃ馬」と呼べば叱られるだろう。だが法華津さんと
コンビで出場した北京五輪では、会場の大型スクリーンの
動画に驚き逆走してしまったという。
▼かなり扱いの難しい馬だったようである。このため
法華津さんは個人34位に終わる。しかもウィスパーは
その後、脚の不調に陥り、しばらくは競技に出られない
時期が続いた。それでも法華津さんは愛馬を見捨てず、
獣医師のところを回るなどして、いたわったそうだ。
▼おかげでウィスパーは回復、昨年末からの国際大会などでの
活躍により五輪代表が決まった。前回の北京での自身の記録を
更新し、日本人として最年長の出場となる。初出場は何と
48年前の東京五輪というから、脱帽するしかない。
▼体力は落ちているに違いない。しかし、愛馬との息や
「馬遣い」の妙はますますさえてきているらしい。もう
熟練した職人の域と言っていい。企業や団体のトップ、
それに政治家や官僚にしても、教えられることは多いはずだ。