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産経抄 2月19日
昭和39(1964)年10月10日に行われた東京五輪の開会式は、前日
までの雨が嘘のような晴天に恵まれた。航空自衛隊の「ブルーインパル
ス」が青空に描いた5色の五輪を見上げて、自動車修理工場「鈴木オー
ト」の社長が叫ぶ。
▼「この辺、全部焼け野原だったんだぞ。食うもんも何もなくて…。それ
がどうだい? 世界一のタワーができて、とうとうオリンピックだぞ」。公
開中の『ALWAYS 三丁目の夕日 ’64』(山崎貴監督)の一場面であ
る。
▼先日、2020年東京五輪の開催計画が明らかになった。招致委員会
は、東日本大震災からの「復活」を国内向け、「東京の都市力」を海外
向けのメッセージと考えているようだ。なぜ世界に「復活」を訴えないの
か。大震災の惨状から立ち上がる姿は、災害や貧困にあえぐ国や地域
の人々にも勇気を与えるはずだ。
▼48年前の五輪によって、東京の景観は一変した。それ以上に「復活」
を世界に印象づけたのは、五輪に合わせて開業した、東海道新幹線だ
ろう。当時、世界最高速の鉄道を一目見ようと、海外からも多くの人が
訪れた。今の日本にも、時速500キロのリニア中央新幹線がある。五
輪開催に開業が間に合いそうにないのが残念だが。
▼「身の程を知ってます」。映画のヒロインは、今ではほとんど死語にな
ったようなセリフを口にする。もっともやがて恋に落ち、周囲の大人たち
を驚かせるような大胆な行動に出る。
▼結婚が決まり、勤め先の「鈴木オート」の奥さんから仕事を続けるよ
う勧められ、「そんなことが許されるんですか」と驚く。五輪を境に日本
人の意識が変わった。8年後の五輪もまた、大きな転機になるかもしれ
ない。