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【産経抄】2月9日
刃のついた円盤を回転させてトンネルを掘り進め、同時に後方で
コンクリートのブロックを貼り付けていく。シールド工法は、
19世紀の中頃に英国で開発された。木製の船を食い破り、できた
穴に体液を塗りつけて、水の浸入をふせぐ船食虫(フナクイムシ)が、
ヒントになったといわれている。
▼この工法によって造られた、世界初の海底トンネルは、実は
本州と九州を鉄道で結ぶ関門トンネルだ。明治時代に後藤新平
鉄道院総裁のもとで構想が持ち上がり、完成したのは、大東亜戦争の
さなかの昭和17(1942)年だったというから驚く。
▼本州と北海道を隔てる津軽海峡の下を貫く「青函トンネル」は、
昭和39年に着工して24年後にようやく開業した。現在でも
鉄道トンネルとしては、世界最長である。8年前からは大成建設が、
トルコ最大の都市、イスタンブールのボスポラス海峡を横断して
ヨーロッパとアジアを結ぶ、トンネル建設に取り組んでいる。
▼そんな日本が世界に誇るトンネル工事技術に、死角があった
のだろうか。岡山県倉敷市にあるJX日鉱日石エネルギー水島製油所で、
建設工事中だった海底トンネルが7日、水没事故を起こした。
行方不明となった作業員5人の捜索は、たまった水が濁って
ダイバーたちの視界を遮り、困難を極めている。
▼シールド工法に精通したベテランばかりの作業員のなかには、
父親にあこがれて同じ仕事に就いた人もいるそうだ。日本の
トンネル工事の歴史を振り返れば、現場が一体となって、事故に
立ち向かってきた。
▼工事の責任者は会見で、涙をこらえながら、5人の救出を
「お願いします」と声を絞り出していた。関係者全員、まったく
同じ思いであろう。