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【産経抄】2月3日
「よばい」という言葉に「夜這い」をあてれば、夜陰にまぎれて相手の寝床に
忍び込む姿が思い浮かぶ。もっとも歌人の尾崎左永子さんによれば、語源は
「呼ばひ」で「自然発生的な求婚手段であった」。〈秋萩の散りの乱(まが)ひに
呼び立てて鳴くなる鹿の声のはるけさ〉。万葉集のこの歌の「呼び立てて」も、
妻恋う鹿の恋鳴きである(『古典いろは随想』紅書房)。
▼沖縄県宜野湾市長選をめぐって沖縄防衛局が、投票権がある職員と親族の
リストを作成し、局長が職員に投票を呼びかける講話を行っていたという。
選挙への干渉と疑われても仕方がない。耳を疑う発言によって更迭された、
前局長に続く不祥事である。
▼宜野湾市は、「世界一危険」とされる米軍普天間飛行場を抱えている。
名護市辺野古への移設が実現しないかぎり、日米の抑止力を維持しながら、
地元負担を軽減する道はない。その道理を地元の人たちにわかってもらう
ためなのだろうが、夜陰にまぎれるがごとくの不信を招く行動を取る必要が
どこにあるのか。
▼愛する人に求婚するように、心をこめて説得を続けるのが、本来の務めの
はずだ。頼りない防衛相のもとで危機感を強めているとしたら、その心情は
理解できなくもないが。
▼宮本雅史那覇支局長によれば、宜野湾市職員労働組合では、特定候補への
協力を呼びかけていた。公務員の政治的中立という点ではこちらも大問題の
はずだが、なぜか小紙以外は報じない。
▼「夜這い」と同じように、「杓子(しゃくし)定規」もまた2つの意味を
持つ。融通がきかない、そして本来は正しくない定規で測ることだ。沖縄の
基地問題に曲がった杓子の定規をあて続ければ、解決はますます遠ざかる。