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『宇宙はなぜこんなにうまくできているのか』 村山斉著 URLリンク(www.yomiuri.co.jp)
評・朝吹真理子(作家)
美しくシンプルな世界
「なぜ夏は暑くて、冬は寒いのか」といった実はよくわかっていない日常世界の法則を丁寧に解くことから本書ははじまる。
夏が訪れるのは、歳差運動で地軸が傾き、太陽光線が当たりやすくなる。空気中の「分子の動き」が肌に当たることで人や温度計は暑さを感知する。
地球の仕組みを知ることは、太陽の核融合、約137億年前のビッグバンを解することにも繋がる。
物理学の法則はシンプルで美しい。宇宙の謎に迫った科学者達の歩いた道を、読みながら辿れるので、迷路に入り込むような不安感はない。
章が進むにつれ、宇宙全ての因果関係を記述可能にしようとするほど、なぜここまで人間に「ちょうどよく」宇宙が存在しているのか、という大問題に行き着く。
宇宙が存在することへの科学者達の問いは、なぜ私たちが生きているのかという根本的な問いと等価になる。
神的な存在を持ち出さないことには説明が出来ないほど、人間にとって「奇跡」的な宇宙。この謎を、神を抜きにこの宇宙の実在を記述可能にするのが量子力学の「超ひも理論」になる。
それは、私たちの存在するこの宇宙以外に、無数の宇宙が同時存在する(「マルチバース」)という発想で、私たちの空間は縦横高さの三次元だけではなく実は九次元であり、
他六次元は小さく複雑に折りたたまれているため私たちには観ることができない。宇宙は10の500乗個もあり、そのうちのたったひとつのこの宇宙に、私たち人間が存在しているという理論である。
未来は予測可能で、実験は常に同じ条件が同じ結果をうむことが科学の理だと思っていた。量子論では私たちが存在している宇宙は、ランダムな確率の上に築かれてあるらしく、全てが予測不可能。
その不確実性は、これまでの物理学のイメージとは異なる。量子力学は人間の感覚に案外フィットするとも思った。宇宙構造の一部が記述されることで謎も鮮明になる。いま私たちが実在している宇宙への驚きに満ちる。
URLリンク(www.yomiuri.co.jp)