12/08/04 02:12:19.63 NvKPGEhM0
今日は珍しく院長室によばれた。院長室には事務員と滅多に見ない小綺麗な50台前半の
看護師がいた。今日の要件は、肺気腫、呼吸不全の患者の往診の任務命令だった。しかし
それならば開業医の先生にお願いする方が安心ですと上申したところ、開業医から押し付けられた
のだそうだ。なんとなく腑に落ちない話打と思いながら事務員の運転する車の後部に
小綺麗な看護師とならんで座る。車中ではずーっと目をつむり一言も会話をせずじーっと
していた。どこをどう走ったのか分からないがおよそ30分後に目的地についた。
事務員は慣れた様子で大門をくぐりぬけ駐車場に車をおいた。車を降りると猛暑の中、
白のワイシャツ黒のズボンの若い男がうやうやしく挨拶しながら往診カバンを受け取り
おおよそ100メーター先の玄関まで案内した。まさしく純日本風の大邸宅だ。寝室に
通されベット上で起座位になって酸素吸入をしている70歳台の男に対面した。
既往歴、治療歴、などを聞きながら診察を終えた。治療歴から今まで色々な著名な先生方のお名前
が次々と出てきた。そこで私はこれまでの治療が的確で敢えて新たな治療法はない事を伝えた。
すると、この男は背中の龍の険しい表情とは逆に弱々しい普通の人の患者さんになっていた。
早々にこの場を離れ車に乗った。車内に看護師が乗り込んでいない事を運転手に伝えた
ところ、今晩はここに泊まるのだという返事が返ってきた。
病院に帰ってその翌日、院長に仔細を報告した。すると、院長が「僕には家族がいる」
君は独身だから今後頼むと言われ何度も断りの返事をしたが「頼む、頼む」の一点張りに
根負けして引き受ける事にした。この男には腕利きの弁護士が雇われているそうで、
もし、往診を断れば「応召義務違反」で追求してくる可能性もあると思った。
しかし、患者さん宅に泊まらされる看護師が一番気の毒だと思います。人権侵害だと
その弁護士に言ってやりたく思い機会が有ったらいいがと思いました。