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池袋（東京都豊島区）と聞くと多くの人が「サンシャイン６０」を上げる。
１９７８年４月、それまで超高層ビルの代名詞だった「霞が関ビルディング」（千代田区）の
地上３６階を大きく上回る、６０階建てのオフィスビルが誕生した時、人々は日本の成長と
重ねて心を躍らせた。東京ドームより少し広い約５・５ヘクタールの敷地には他にホテル、
商業ビル、文化会館など計５棟が建ち、「サンシャインシティ」という再開発の先駆的な街ができた。
昔は池袋駅から東にのっぽなビルが見えたというが、今はたくさんの商業ビルに隠れて見えない。
東口を出て最大の繁華街「サンシャイン６０通り」を歩くか、東京メトロ有楽町線東池袋駅から
地下通路を利用した方が迷わない。
サンシャインシティがすごいのは、３５年も前に地上１１階建ての「ワールドインポートマート」に
日本初の屋上水族館を造ってしまったことだ。同社の原田淳輔さん（４２）は「どこの都心部の街にもない、
再開発の目玉として設置した水族館です。池袋の象徴の一つとして今でもたくさんの方に愛されています」
マンボウやラッコなど一世を風靡（ふうび）した海洋生物をいち早く展示し、こだわりも持ってきたが、
内陸の水族館を維持する苦労は並大抵ではない。例えば海水。年間約１万トンを必要とするが、
海浜地区に多い水族館と違って近くから取り込むことなどできない。八丈沖から採水し、
竹芝桟橋（東京都港区）からは陸送する。ビル地下のタンクにため、必要に応じてくみ上げる。
コストは、ばかにならない。
それでも続ける意義がある。豊島区は２３区で住民１人当たりの公園面積が最も少ない。
２年かけて水族館開業以来の大改修を行い、２０１１年８月に新装オープン。屋外に緑を増やし、
アザラシが頭上を回遊するなど動きがよく分かる展示を積極的に取り入れた。
「年間パスポートを購入して来場いただく地元のお母さんとお子さんが本当に増えた。
公園の代わりに憩いの場にしていただけている」。水族館を運営するサンシャインエンタプライズの
藤田宗克さん（４３）が教えてくれた。
サンシャインで人気を二分する施設がプラネタリウム。水族館同様、街のオープン時から営業を始め、
０４年３月からはコニカミノルタが運営している。同社合併前のミノルタ社の前身「千代田光学精工」は
日本初の国産プラネタリウムを完成させた会社で、国内屈指のシェアを誇る。サンシャインが一時、
プラネタリウムの撤退を考えた時、ドーム屋根を持つこの施設をなくしてしまうのは惜しいと考え、直営に踏み切った。
同じく１１年に大改修を終えてリニューアルオープン。「プラネタリウムは子供の時、親になった時、
孫ができた時の３回しか行かないなんて言われるが、物語性の高い大人やカップル向けのプログラムを
充実させたことでファン層が広がった」と同社の北陽子さん（４８）。午後７時の「ナイトレインボー」を観賞すると、
ハワイの夜空を紹介する美しいパノラマ映画と星々とともに南国の花の香りが館内を包む。
サンシャインでは「噴水広場」も外せない。古くは松田聖子さんや中森明菜さん、最近では
ハロー！プロジェクトやＡＫＢ４８の派生ユニットなど、ビッグアイドルがデビュー期に歌や
パフォーマンスを披露する場となっている。東京砂漠といわせない、憩いと夢のある新たな都心像を示し続けている。
そーす 毎日ｊｐ／東京
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