13/06/15 22:15:23.64 0
「水で800円とる店なんて、他にもいくらでもあるんですけどね」
「ああ、そうでしたか。僕、今回は『食べログ』を見て来店したので……」
「何を見たかは知りませんけど、水が有料の店があるのは常識じゃないですか?」
キョトンとしてしまった。僕は、いまなぜこの人にケンカを売られているのだろう?
いや、もしかしたら彼にはケンカを売っているつもりなどないのかもしれない。
でも、それはどう考えても初対面の相手に放つべき言葉ではないと思うし、
あきらかにケンカを吹っかけているようにしか思えない口ぶりだった。
「いや、それが常識なのか、僕にはわからないです。
そもそも、僕はこれまで一度も代金を払わずに水を楽しんできましたし」
「いや、常識でしょ」
他人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべる店主に、ますます僕は頭に血がのぼってしまった。
「じゃあ、それが本当に常識なのか、広く世に問うてみましょうよ」
「ええ、どうぞ」
もう、この頃になると、僕は激昂状態だった。こんなに冷静さを失ったのは、いったい何年ぶりだろう。
このあと、二言三言やりとりがあったかと思うが、残念ながら記憶が定かではない。
だが、店主が最後に言った言葉だけは絶対に忘れない。
「これがうちのスマイルなんで」
その言葉はとても冷たく、これ以上のコミュニケーションを拒むひとことだった。
扉を、閉ざされた思いがした。この時点で、僕は完全に思考停止となってしまった。