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国交が正常化し40周年を今秋に迎えるにもかかわらず、日中関係がぎくしゃくしている。
原因は、歴史認識と尖閣という国交正常化以後も日中間のトゲとなってきた問題だ。
名古屋市の河村たかし市長は先月、表敬に訪れた中国南京市の共産党委員会幹部らに
「一般的な戦闘行為はあったが、南京事件というのはなかったのではないか」と発言した。
南京大虐殺については、日中首脳の合意で作った日中歴史共同研究委員会で討議した。
犠牲者数などで日中間で認識の違いはあるが、日本側が虐殺行為をしたことでは、
委員会の議論でも一致している。
そういう重い経緯のある問題で、姉妹友好都市である南京市の訪問団に対し、河村氏が
一方的に自らの考えを示したのは、あまりに配慮が足りない。
河村発言に対して、南京市民らが強く反発した。上海の日本総領事館は、交流文化行事
「南京ジャパンウイーク」の延期を決めざるをえなくなった。日中柔道交流は中止になった。
だが河村氏は、発言を撤回する気はないようだ。
国益がぶつかる政府間とは別に、都市や民間の交流は信頼関係醸成に有効だ。それなのに
河村氏の発言は、政治家としても市長としても不適切である。
中国側も、市民や青少年交流が「相互信頼を絶えず深化させる」(楊潔チー
〈ヤン・チエチー、チーは竹かんむりに褫のつくり〉外相)と評価するのなら、
交流を狭くするような動きは避けてほしい。
河村発言問題が収まらないなか、日本政府は2日、沖縄県の尖閣諸島の四つの無人島に
新たな名前を付けた。すると、中国政府は翌日、独自の名称を発表して自国領と主張した。
日本だけでなく、中国でも世論が政治に影響を及ぼす。列強の侵略の記憶が根強く残る一方で、
大国意識の強い国民は「弱腰外交」に敏感だ。
このため外交当局はしばしば世論の攻撃の的となる。命名でただちに反応したのは、
世論を沸騰させないためでもあろう。
尖閣沖漁船衝突事件などで日本の対中世論も厳しいが、日本政府は命名で記者会見や
報道発表をせず、ホームページでの掲載にとどめた。藤村修官房長官は「事務的に淡々と
やってきたことだ」と語った。こうした冷静さを両国は保つべきだ。
歴史認識や尖閣といった問題で、日中双方がともに満足できる魔法の杖を見つけるのは至難のことだ。
そうであるならば、日中の両国は友好と安定の大局を選ぶしかあるまい。
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