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31日から9月3日にかけて、「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北小委員会」が
北海道札幌市で開催された。WCPFCは、北太平洋のマグロ資源を管理する国際委員会。
絶滅が危惧される太平洋クロマグロについて、米国が踏み込んだ漁獲規制を採用するよう提案したが、
日本政府を代表して交渉に臨んだ水産庁は頑強にこれを拒否。緊急ルールの策定を来年まで引き伸ばすことが決まった。
日本は世界最大のマグロ消費国かつ漁獲国であり、国際機関の要職にも水産庁の役人を送り込むことができるほど力を持っているので、
日本の主張は通りやすい。しかし心配なのは、太平洋クロマグロの資源量である。国際的な科学評価によれば、
現在、初期資源量(人間が漁をしていなかった時代の資源量)の3.6%という「歴史的最低水準」である。
2014年11月には、国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定したほどだ。
零細漁師と大型巻き網漁業の対立
興味深いのは、国内漁業者の間に、根深い対立が発生する事態に及んでいることだ。それは家族経営的な零細の漁師が多い沿岸漁業者と、
日本水産やマルハニチロなど大手資本が運営する巻き網漁業者の対立だ。前者は禁漁を決断し、後者は産卵期の巻き網漁業をやめようとしない
「堪忍袋の緒が切れたんです」。6月10日、対馬の沿岸漁業者がもつ漁船が、入港してきた巻き網漁船を取り囲んだ。
沿岸漁業者が抗議のために出した漁船はなんと102隻にも及ぶ。その2日後にも、74隻で巻き網漁船を取り囲む事態が発生した。
対馬の沿岸部には太平洋クロマグロ(以下、クロマグロ)の養殖場が点在する。対馬沖にヨコワ(クロマグロの幼魚)が出現するこの時期、
漁獲したヨコワを養殖場へ入れるため、巻き網漁船が入港してくる。
対馬では、収入の9割がクロマグロ、という漁業者も多いという。
こうした沿岸漁業者にとって、全国的に知られる青森県の大間1年分以上のクロマグロを、わずか1日で水揚げする能力をもつ大型巻き網漁業は脅威だ。
「巻き網漁船が通ったあとは、海がカラカラになり、しばらく漁ができなくなるのです。せめてヨコワが対馬海峡を通過する5~6月と、
日本海から戻ってくる11~12月の操業は勘弁してくれと昨年9月に要望書を出したんです」。対馬市曳縄漁業連絡協議会の梅野萬寿男会長はそう話す。
今年、対馬と壱岐の漁業者は、6~7月の産卵期の禁漁を決めた。クロマグロはこの時期、日本海で卵を産む。もちろん収入は減るが
資源の持続性を維持するためには仕方ない措置と考えてのことだ。しかし、巻き網漁業の側は、禁漁する気などさらさらない。
「彼らは無反応なばかりでなく、私たちの仲間が海上に設置しておいた『シイラ漬け』という竹でつくった仕掛けごと巻く事態も発生した。
こうした状況が続くようでは、もう私たちはこの島で生活することができなくなると、抗議船を出したんです」
結局、8月末に日本遠洋旋網(まきあみ)漁業協同組合との話し合いが行われることになったが、あくまで話し合いの場が用意されたに過ぎず、
根本的な解決はされていない。
「魚が大量にいた時代は巻き網漁船が巻いても誰も文句は言わなかった。今はそういう状況じゃない。何もかもやめろとは言っていない。
こちらにも生活があるので、せめてこの時期の漁だけは自粛してもらいたいという話だ」(対馬の漁業者・宮﨑義則氏)。
聞き慣れぬシュプレヒコール
「巻き網やめろー」、「産卵期のクロマグロを獲るなー」、「水産庁は資源管理をしっかりやれー」
8月3日。昼下がりの都心で聞き慣れないシュプレヒコールが鳴り響いた。「クロマグロの資源悪化と水産庁の無策に、
いてもたってもいられなくなったんです」。デモを企画した茂木陽一氏は釣り業界ではよく知られた存在で、多くの釣り人がデモに参加した。
「参加者は、国内のみならず、海外でも釣りを行っている人が多く、魚の減少と水産庁の資源管理の甘さを肌で感じています」。
このデモには、全国各地から90人ほどが参加。本業は水産業とは関係のない一般企業のサラリーマンが大半で、弁護士や医師、主婦も参加していた。