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[東京 28日 ロイター] - 4─6月の落ち込みから反発が期待された7月の消費関連統計は、天候回復や所得増にもかかわらず、
目立った回復が見られない結果となった。平均所得以下の世帯が6割を占めるなど、社会構造の変化の中で、
必需品の値上がりが低所得層の財布を直撃しているためだ。
政府内では低所得層の消費支援策の必要性を指摘する声が広がってきている。 <「夏こそ回復」、いまだ見えず>
今年の夏こそ好条件がそろい、必ず消費は回復するーー誰もがそう予想していた7月の消費統計だが、相変わらず動きは鈍かった。
昨年を上回る伸びとなった春闘賃上げ、ボーナス支給、バブル期以来の高水準となった求人倍率、
公的年金支給額増、ガソリン価格下落、プレミアム付商品券など、所得環境をめぐるプラス材料には事欠かない。
しかし、7月の実質消費支出は2カ月連続で前年比減少。耐久消費財の動きが鈍かった。
7月小売業販売額も気温上昇の効果で夏商材が押し上げ、前月比で増加したが、やはり耐久消費財の動きが鈍い。
第一生命経済研究所・主席エコノミストの新家義貴氏の試算では、7月の全国百貨店売上高も乗用車販売も前月比では減少。
「少なくとも現時点で7月の消費が明確に改善した様子はうかがえない。7─9月期の消費については慎重に見ておいた方が良い」と言う。
<増える低所得層世帯>
所得環境は決して悪くない。勤労者世帯の実収入は物価調整後の実質で4月以降4カ月連続で1─2%台の伸びとなっている。
7月はボーナス支給のずれもあり5.4%増となった。それでも政府・日銀が描く「所得から消費」
という波及効果のシナリオがなかなか実現しない点について、政府では「デフレマインドが払しょくしきれていない」と説明するが、
それだけが理由とは言えない。
原因の一つは、低所得層の人口拡大だ。雇用・所得環境が多少改善しても、物価上昇に打ち消され、
その波及効果は以前に比べて小さくなっていると考えられる。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、全世帯の14年調査の平均年間所得415万円を下回る世帯の割合は60%を占め、
「生活が苦しい」との回答も56%と、10年前から7%ポイント増えている。
高齢化も低所得層の拡大の要因の一つと言われている。 「国民生活基礎調査」によると、
65歳以上の高齢者世帯の全世帯に占める割合は24%。毎年増えて続けている。そのうち、年金のみで暮らす世帯は6割近くを占めている。
ニッセイ基礎研の井上智紀・准主任研究員は、昨年4月の消費税増税以降の消費水準は前回1997年時と比べて戻りが鈍く、
特に高齢者でその傾向が目立つと分析する。7月の統計を見ても、実質支出が減少しているのは、
全体の3割を占める世帯主年齢の平均が72歳の高齢者無職世帯だった。
<対策の必要性、政府内でも認識広がる>
こうした構造的な変化を踏まえ、「昨年4月の消費増税をきっかけに低所得層を中心に節約志向が広がっている」
(SMBCフレンド証券チーフマーケットエコノミスト岩下真理氏)との見方が今、官民を問わず広がっている。
ある政府高官は「補正を組むなら、意味があるのは低所得者対策だ」と語り、
中国経済への不安や金融市場の乱高下が続く場合の対策の一つとして、低所得者支援策の必要性をにじませた。
内閣府では今月26日、「必需品価格上昇が消費に与える影響について」と題したリポートで、
低所得層は生活必需品に充てる消費支出の割合が6割にのぼり、物価上昇に脆弱だと指摘。
今後の政策対応を検討するうえで、低所得層対策が必要だと結論づけている。
販売側から見た商業動態統計でも、自動車や家電、住居関連の耐久消費財の動きは「平年並みの販売水準に戻っていない」(経済産業省)という状況だ。
7─9月期の消費は、8月の猛暑効果や電気・ガス代の値下がりなどを追い風に持ち直すとの見方が民間エコノミストの間でまだ根強い。
しかし、当初の期待ほどの強さにはならないとの見方も広がり始めた。
「次の増税が視野に入る中で低所得層中心に消費マインドは萎縮している」と指摘する専門家もおり、財
政再建とアベノミクスを両立させるには低所得層対策を重視すべきとの声が強まりそうだ。 (中川泉 編集:石田仁志)