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人手不足や作業員の高齢化を背景に、建設現場でロボットの導入など生産効率化の取り組みが急ピッチに進んでいる。
大和ハウス工業がロボットスーツの実際の作業現場への試験導入を始めたほか、小型の無人機「ドローン」などの活用も進む見通し。
積水化学工業は住宅部材の工場生産化率を大幅に引き上げる。資材価格の高騰も重なり、現場作業の人的負担軽減は建設コストの削減という面でも喫緊の課題となっている。
大和ハウスは、同社が出資する筑波大発のベンチャー、サイバーダインが開発・製造した「ロボットスーツHAL作業支援用(腰タイプ)」10台を集合住宅の施工現場などに導入し、実証試験に着手した。
HALは腰に装着して脳から筋肉に伝わる微弱な電気を小型センサーで感知し、モーターを動かして人が立ち上がる動きを補助する。
建設現場では数十キロあるセメント袋や木材など重量物を何度となく人手で運搬する作業が避けられない。大和ハウスは、そうした作業の負荷を、HALの使用で最大4割軽減できるとみている。
大和ハウスの中岡一郎・技術本部技術部理事は「建設業技能者は減り、高齢化も進んだ。ロボットスーツを導入することで、
働き続けられる魅力的な現場を実現し、技能者が定着するようにしたい」と狙いを説明。グループの大和小田急建設やフジタを含め7カ所の現場で実証試験を行う。
HALの重量は軽いといっても3キロ。試験を通じて作業員が身につけることの負荷や、実際の効率性、安全性などについてチェックを行う。
改良を加えたうえで、2016年5月からの本格運用を目指している。
東京理科大発ベンチャーのイノフィス(東京都新宿区)が開発した腰部を補助する「マッスルスーツ」は、圧縮空気を使って作業を補助する軽量のロボットスーツ。
すでに介護・福祉の現場などで約800台の出荷実績があるが、建設業界の間でも注目度は高く、ゼネコン(総合建設会社)をはじめ数十社が試験導入しているという。
ただ、建設現場では高い場所に部材を上げ下ろしする作業が多く、腰だけではなく腕も補助の対象としてほしい、といったニーズが強いため
「新たなタイプの開発が必要」(イノフィスの藤本隆・副社長)。早ければ今秋にも建設業向けの試作品を開発する方針だ。
ドローンの活用も進む。高所作業車などを使わずに現場の全景写真を撮影する取り組みはすでに拡大。高い場所の保守・点検作業への導入も検討されている。
コマツは、ドローンと無人重機を組み合わせた建設現場の“完全自動化”を目指す。
住宅建築の現場では、工場生産化率を増やし、なるべく現場での作業を減らす取り組みが進化している。積水化学工業は、
16年度までの3年間に国内の住宅生産8工場に総額170億円を投資。産業用ロボットの導入で自動化を進めるとともに、施工現場での作業を工場内に取り込み、生産性を向上させる。
直近では現場で取り付けていた太陽光パネルを、工場で屋根に取り付けることで作業を効率化し、価格を引き下げた新商品を発売した。
今後、他の商品にもこうした工夫を導入し、「工場でなるべくものを作って現場では省施工とする」(積水化学工業住宅カンパニーの関口俊一プレジデント)ことで、人手不足と資材価格高騰の影響を吸収したい考えだ。
昨年4月の消費税率引き上げに伴う住宅着工の反動減によって、戸建て住宅の場合、職人不足は若干緩和された。
だが、ポラスグループの中内晃次郎代表は「(足元の)木材のプレカット事業の受注が増えており、秋口から再び確保が難しくなってくるはず」と指摘する。
建築コストについても、業界内では「下がるとはみていない」(旭化成ホームズの川畑文俊取締役)と厳しい事業環境が続く見通しだ。
長期的な視点に立った場合、さらに事態は深刻だ。大工やとび職といった建設技能労働者は、55歳以上の比率が他産業と比べても急速に高まっている。
建設業界は高年齢層の労働力に支えられている状況で、ロボットスーツなどによる作業効率化は有効だ。だが、こうした世代の労働者はこれから大量に退職する。
総務省の労働力調査によると、14年の建設業就業者数は505万人でピーク時に当たる1997年から3割近く減少した。
建設経済研究所は、このまま若者が建設業界を敬遠する状況が続き、高齢者の退職も増えれば、2025年には就業者数が241万人と、
さらに半分近くになるというシミュレーションを出している。
こうした事態を回避するには、作業の効率性を高めるなど労働環境の改善に力を入れ、人材が流入しやすくすることが前提条件。
その意味でも、ロボットの導入をはじめとした現場施工の軽減化をめぐる動きは一段と活発化しそうだ。(伊藤俊祐)