15/07/02 11:59:47.58 .net
URLリンク(jbpress.ismedia.jp)
先週、タイ国防当局の調達委員会が、中華人民共和国から3隻の潜水艦を購入することを決定した。
このニュースはアメリカ国防当局、ホワイトハウスならびに連邦議会に衝撃を与えている。
2013年に発生したタイでの軍事クーデター以降、オバマ政権はタイ政府に対して、
人権抑圧を理由として政治的・軍事的に「あまりにも冷たい態度」をとっていた。
そのことに懸念を表していたアメリカ軍関係戦略家たちは、このようなオバマ政権の対タイ政策の失策を嘆いている。
中国製潜水艦は「リーズナブルなトヨタ車」?
永きにわたって潜水艦を保有してこなかった王立タイ海軍にとって潜水艦の保有は悲願であり続けた。
しかしながら、タイには自国で潜水艦を建造する能力はないし、外国から調達するにしても極めて
高価であるため、なかなか潜水艦調達予算を捻出するには至らなかった。
ところが、数年前から、中国による南シナ海やインド洋拡張戦略に対応する形で東南アジア、
南アジア諸国海軍では、潜水艦の調達に向けての機運が高まってきた。そのような周辺諸国の動きに対応し、
2011年、王立タイ海軍はドイツから6隻の小型潜水艦を77億バーツで購入する計画を建てた。
しかし、時のインラック政権によって計画は承認されなかった。
その後、クーデターにより軍事政権が誕生すると、一度葬られた潜水艦購入計画は復活することに成功した。
正式に潜水艦調達調査予算も計上されたため、王立タイ海軍に対して
韓国、ドイツ、フランス、スウェーデン、ロシアそれに中国が潜水艦の売り込みを開始した。
かつて冷戦中は、王立タイ海軍が外国から軍艦を調達する場合はアメリカやNATO諸国から輸入していたのだが、
近年は韓国や中国に発注あるいは購入するようになっていた。また、上記のようにドイツからの
購入計画も存在していたため、アメリカ海軍関係者などは、性能面ではドイツやスウェーデン、
あるいは価格面では韓国といったところが有望と見ていた。
ところが、韓国、ロシアそして中国が最終候補リストに残り、性能、価格、付加サービスを総合的に
判断して中国製潜水艦を調達することに決定されたようである。
タイ政府当局において、潜水艦の専門家以外からは「いくらヨーロッパ製やロシア製より価格が安いからといって
中国製で信頼できるのか?」という危惧が上がっていた。これに対して調達委員会は「信頼性が高いとはいえ、
高額なメルセデスを購入してガソリン代が枯渇してしまうよりは、信頼性が高くリーズナブルな
トヨタを購入してガソリン代を捻出したほうが良いではないか」といった論法で、今や50隻近い近代的潜水艦を製造し
運用している中国からの調達を決定したという。
この決定は、あくまで調達委員会の決定に過ぎず、タイ政府の正式な承認が必要である。
だが、王立タイ海軍は中国から1隻120億バーツ(およそ440億円)で3隻の潜水艦を購入することになる可能性が高い。
海軍間の強固な関係構築につながる潜水艦の取引
アメリカ海軍関係者たちは、このニュースを以下のように深刻な事態と考えている。
「オバマ政権がタイ軍事政権に対して頑ななほど冷たい態度をとり続けていたのを絶好の機会として、
中国共産党政府がタイ政府やタイ国防当局を取り込みつつある成果の1つと考えねばならない」
もちろん、潜水艦を中国から購入するというだけで、タイ軍が中国に取り込まれてしまったと見なすわけではない。
しかしながら、国家機密の塊とも言える潜水艦の取引は水上戦闘艦の取引とは比較にならないほど
当事国の海軍間の強固な関係構築につながる。したがって、少なくともアメリカ政府の対タイ政策が現状のままならば、
潜水艦調達を機に、やがては海軍だけでなくタイ軍部と人民解放軍の関係が強化され、
これまで培ってきたタイ軍とアメリカ軍の関係が弱体化していく可能性は大きいと考えざるをえない。
いずれにせよ、東アジア、東南アジアにおけるアメリカの影響力を減殺させようという中国の外交軍事戦略が
着実に進んでいることは、今回の潜水艦調達を見ても明らかである。「オバマ政権の“アジア・ピボット”は、
一体いかなる成果を上げているのか!」というアメリカ軍関係者の怒りはもっともと言えよう。